土に磨き 動作を数値化 浅田製瓦工場の京瓦(ここに技あり)
(京都市)

2016/9/27 6:00
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 土のにおいが漂う工房。「獅子口」と呼ばれる鬼瓦に成形された粘土の塊を、鋼のヘラがなでていく。作業が始まって10分、手元を照らす明かりが表面にうっすらと反射した。

■寺院の屋根守る

鋼のヘラを使って表面を丹念に磨く
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鋼のヘラを使って表面を丹念に磨く

 京都で古くから作られる京瓦は寺院の本ぶき屋根などに使われる高級品だ。いぶし銀の光沢を生み出すのは「磨き」という特有の作業。粘土作りに始まり、成形、磨き、乾燥、焼成と続く工程の中で、特に熟練の技が求められる。

 浅田晶久さん(68)は浅田製瓦工場(京都市伏見区)の3代目。職人になった45年前には市内に10軒弱の瓦工場があったが、今では手作りを続ける唯一の工場になった。これまでに南禅寺や東寺など数々の名刹の瓦を手掛けてきた。

 磨きにとりかかるのは、成形の後、粘土が半乾きになったタイミングだ。硬さの違いや微妙な凹凸を見極め、水分と力加減を調節しながらヘラを滑らせる。体全体を使う大きな動作だが、手先の角度は一定だ。表面の粒子を滑らかにすることで焼成後に炭素の膜が付きやすくなり、耐水性も向上するという。「平らになってくると、顔が映り込むこともある」と浅田さん。

■食器作りに応用

 先代の父は、技は見て盗めという昔気質だった。一人前になるまで10年はかかる技術。継承の難しさを感じた浅田さんは、京都工芸繊維大と共同研究に取り組み、磨きの動作を数値化した。同大大学院生として3次元動作解析や筋電図解析に携わった阪田将揮さん(30)は「原料の土の荒々しさと完成した瓦の繊細さ。ギャップに感動した」と振り返る。卒業後は浅田さんの工場に就職、研究の成果を生かして瓦職人の道を歩んでいる。

 和風建築の減少や代替の屋根材の普及で、瓦業界を取り巻く環境は厳しい。経済産業省の統計では、粘土瓦の総出荷数は2004年からの10年間で半減した。

 浅田さんは素材としての瓦の魅力を伝えようと、皿やコースターなどの食器作りにも取り組む。きめが細かい粘土を使い、磨く回数を増やして鮮やかな光沢を出した。「身近な製品を通じて若い人や外国人にも関心をもってほしい」と、瓦の将来を思い描く。

文・写真 大阪写真部 三村幸作

〈カメラマンひとこと〉 浅田さんの研究によると、磨きの動作では腰を軸に体全体を大きく動かしているという。躍動感と獅子口の造形美を写そうと、レンズを近づけたり離したりしながらベストな構図を探す。水でぬらしたヘラが白く光った瞬間、シャッターチャンスが訪れた。

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