湿気らせず 閉めやすく 開化堂の茶筒(ここに技あり)
京都市

2017/3/14 6:00
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 円筒形のブリキ板に、銅でつくった筒状の蓋をかぶせて手で回す。「まだ緩い」。金づちや特殊な工具を使いながら容器の側面を広げていく。仕上がったのは高さ10センチほどの小さな茶筒。上から乗せた蓋の重さだけで、吸い付くように自然に閉まる精巧さが特徴だ。

■130近くの工程

 京都市下京区で1875年創業の開化堂は、手作業での茶筒づくりを今も続ける。ブリキの筒を銅や真ちゅうの筒で覆う二重構造。飾り気のないデザインも当時のまま。「気密性を保ちながら円滑に開け閉めできる。本来、相反するものを両立させたのが、うちの技術の強みです」。6代目の八木隆裕さん(42)は、顔が写り込むほど磨かれた作品を手に胸を張る。

 茶葉を湿気(しけ)らせず、開け閉めしやすい空気の僅かな通り道をいかに確保するか。130近くに及ぶ作業工程。出来栄えを大きく左右するのが、茶筒づくりのうち、底面の直径と側面の膨らみを生み出す2つの作業という。

ブリキを金づちで打ち付け、蓋とぴったり合うように直径を広げる
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ブリキを金づちで打ち付け、蓋とぴったり合うように直径を広げる

 茶筒づくりは、ブリキの板を丁寧に丸める作業から始まる。あらかじめ板に継ぎ目の線を刻んではいるが、線はあくまで参考にすぎない。蓋のサイズに配慮しながら、線を基軸に3分の1ミリ単位でずらしながら、最適な直径を探る。

■「感覚」を継承

 蓋との間に絶妙の気道をつくるうえで、側面の膨らみの調整は欠かせない。どこまでブリキを薄く延ばして面積を広げていくかは、蓋をかぶせて手で回したときの感触が全て。八木さんや5代目の聖二さん(69)ら限られた職人にしか不可能な匠(たくみ)の技だ。

 機械でできた茶筒の方が安くて精巧、と言われた時期もあったが、八木さんは「代々継承してきた“感覚”はデータ化できない」と言い切る。手作業の良さは次第に見直され、注文の声は海外からも。昨年5月、工房近くに開いたカフェには外国人観光客も訪れ、陳列した茶筒を買って帰る。

 売れ筋は銅製の高さ11センチのサイズで、1個1万2960円(税込み)。「逸品は国境を越える。100年先も茶筒をつくり続けるため、多くの人に商品に触れてほしい」と力を込める。

文 大阪社会部 小西雄介

写真 三村幸作

〈カメラマンひとこと〉蓋の閉まり具合の細やかな調整が茶筒づくりの要だ。金づちでたたく手先と製作中の茶筒を一枚の構図に収めようと、職人の肩越しに作業台をのぞき込んでみた。ストロボの光でブリキの銀色と銅の光沢が浮かび上がり、シンプルで美しい曲線が際立った。

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