デンマーク、難民の財産没収へ新法成立
加盟国の独自対応にEU苦慮

2016/1/26 23:12 (2016/1/27 1:35更新)
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 【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)が、加盟国が打ち出す独自の難民対策に苦慮している。25日、ドイツなどが一時復活させている国境審査を最長2年まで延長できるよう準備に着手。デンマークでは26日、難民の財産を政府が没収できる新法が成立した。難民流入の有効な抑制策を示せない中、EUの結束を乱す個別対応を認めざるを得ず、EUの基本理念の「移動の自由」が大きく揺らいでいる。

 「2016年に入って、もう3万人以上が海を渡って欧州へやってきた」。EUで難民政策を担うアブラモプロス欧州委員は25日、アムステルダムで開いた非公式内相会合後の記者会見で収まる気配のない難民や移民の流入に危機感を訴えた。

 同会合の議論の焦点となったのが、ドイツやオーストリア、スウェーデンが難民流入を抑制しようと復活させた国境審査だ。EU加盟国の大半は域内の国境審査を廃止し、移動の自由を認める「シェンゲン協定」に参加する。治安などに「深刻な脅威」がある場合だけ、原則6カ月まで審査を一時的に復活できる。

 EUの執行機関である欧州委員会によると、昨年9月に審査を復活させたドイツなどは3月に期限を迎える。内相らは昨年12月、難民危機の事態が改善しなければ、期限の延長を検討する方針で一致。25日の会合で国境審査を最長2年まで継続できる準備に入るよう欧州委に指示した。

 欧州委は3月にかけて難民流入の推移を見極めたうえで、具体的な延長手続きに入る。延長すれば1985年に署名されたシェンゲン協定の下で初めてのケースとなる。EUの理念である「移動の自由」の形骸化につながりかねない事態だ。

 難民らに「魅力のない国」と思わせ、流入を抑えようという動きも強まってきた。オーストリアが20日、受け入れ数に「上限」を導入すると表明したのに続き、デンマークでは26日、政府が難民申請者の財産を没収できる新法が成立した。

 新法では難民申請者が所持している所持金のうち、1万クローネ(約17万円)を超す現金や所持品を警察が没収できる。難民らの一時滞在施設の利用料などに充てる狙いだ。

 デンマーク政府は「福祉手当を申請するデンマーク人にも適用されている仕組みだ」(ストイベア統合相)と説明する。しかし、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は「外国人への恐怖や嫌悪をあおる懸念がある」と批判。第2次世界大戦中のナチスドイツによるユダヤ人の財産没収を思い出させるとの批判も欧州では根強い。

 パスポートなしで欧州域内を自由に行き来できるシェンゲン協定は欧州統合の大きな果実。その崩壊を防ぐために残された時間は「たった2カ月しかない」とEUのトゥスク大統領は訴える。3月中旬に開くEU首脳会議までに難民の流入抑制へ有効策を打ち出せなければ、EUが「政治的プロジェクトとして失敗する」(トゥスク氏)との危機感がにじむ。

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