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ベトナム原発中止、資金の壁 剛腕首相の引退も影響

2016/11/22 23:28
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 【ハノイ=富山篤】ベトナム政府が原子力発電所の建設中止を決めた。経済成長に必要な電力インフラの切り札と期待された大型事業だったが、270億ドル(約3兆円)以上とされる多額の費用が障害となった。計画を主導し、剛腕で知られたグエン・タン・ズン前首相が1月に引退したことも影響したとみられる。

 ベトナム国会の代議員約500人のうち、92%が政府が提出した原発計画の中止案に賛成した。

 壁となったのは資金難だ。ベトナムの国内総生産(GDP)は約2千億ドルにすぎず、計画していた原発の建設費はロシアの第1原発、日本の第2原発と合わせるとGDPの1割超の水準に達する。インフラ整備を急速に進めたことなどから、10年にGDP比で50%だったベトナムの公的債務は16年末に65%に上昇する見通しだ。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)などとの自由貿易の推進に伴って、関税収入も10%近く減っているもようだ。

 「共産党の新指導部が主導して原発計画を中止した。ズン氏が去ったことが大きい」。現地ジャーナリストは話す。一時は最高指導者の共産党書記長への就任が確実とされたズン氏が今年1月の党大会で引退。事実上の失脚とみられ、堅実派のグエン・スアン・フック氏が首相に就いた。

 ズン氏は原発のほか、ハノイとホーチミン市を結ぶ高速鉄道なども主導してきた。今後は他の大型プロジェクトも中止や凍結となる恐れがある。

 原発への国民の警戒感もあった。共産党一党独裁のベトナムでは従来、民意を気にせずに政策を決定できた。東京電力福島第1原発の事故でベトナム国民に不安の声が上がったが、12年にハノイの大学に原発の仕組みを解説するショールームを開設するなど当局は計画を着々と進めていた。

 ところがベトナムでも近年、フェイスブックなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が盛んになり、メディアを管理してきた共産党政権による情報統制は難しくなった。4月には中部ハティン省に台湾企業が建設中の大型製鉄所の周辺で、魚が大量死する公害が起きた。環境保護機運が全土に広がり、10月には同製鉄所周辺に1万人が集まって大規模なデモを展開した。

 新興国への原発輸出は順風満帆とはいかない。日本と14年に原子力協定を結んだトルコでも、原発建設はやり直し総選挙や閣僚交代が響き、計画に遅れが生じている。日仏連合の事業主体の1社、三菱重工業は「(当初目標である)23年の発電開始に向けて最大限努力する」との立場だが、現状は事業化調査を続けている段階だ。

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