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トルコ、大統領権限集中に審判 国民投票、開票始まる

2017/4/16 20:37
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 【イスタンブール=佐野彰洋】トルコで16日、大統領権限を強化する憲法改正の是非を問う国民投票が行われた。昨年7月のクーデター未遂事件以降、反政府とみなす勢力への弾圧を続けるエルドアン大統領に対する信任投票の側面もある。世論は二分されているが、開票速報で賛成派がリードしたとの情報もある。欧州とトルコの関係修復に影響を与えそうだ。

16日、イスタンブールの欧州側新市街で投票に臨む市民

 国民投票は16日午後5時(日本時間同日午後11時)に締め切り、即日開票に移った。トルコ民放NTVによると、開票率約65%の段階で賛成が約55%と反対の約44%をリード。大勢判明は同日夜(日本時間17日未明)となる見通しだ。

 憲法改正案の柱は大統領権限の大幅な強化だ。首相職を廃止し、現行の議院内閣制は大統領が国家元首と行政の長を兼ねる体制に移行する。大統領に国会の解散権を与え、司法の人事権も大統領が握る。改憲後のトルコ大統領の権限は、高官人事に上院の承認が必要な米国の大統領をはるかに上回る。

 エルドアン大統領の実質的な任期延長にも道を開く。2期10年の任期は従来憲法と変わらないが、改正憲法下で選出された大統領の任期は旧憲法下の任期と合算する必要が無い。改憲後初の大統領選は19年実施の見通しで、同氏は29年まで大統領職にとどまることが可能になる。

 エルドアン氏は改憲を目指す理由を「発展と成長に必要な安定と信頼をもたらすため」と主張してきた。政治の混乱を嫌い、期間の長い投資資金はトルコを敬遠している。外貨準備高は短期債務の額とほぼ同額で、こうした脆弱性が通貨リラ安の一因となっている。再び投資を呼び込むには、権力集中による安定が必要というのがエルドアン氏の理屈だ。

 悲願の改憲に道筋をつけるため、カリスマ性が強いエルドアン氏の人気と与党・公正発展党(AKP)の組織力を前面に押し出した運動を続けた。事前のキャンペーンは改憲に反対する野党の集会の開催やテレビ番組の放送時間を大幅に制限。地方当局が野党の集会開催を認めないケースもあった。

 だが世論調査によると、有権者の賛否は最終盤まで拮抗したもようだ。背景には強権姿勢をあらわにするエルドアン政権に対する疑念がある。同政権は昨年7月のクーデター未遂事件以降に非常事態を宣言し、これまでに5万人近くを逮捕。12万人を超える公務員や軍人を解雇・停職処分とした。

 加えて反政府とみなすメディア160社以上を閉鎖した。少数民族クルド人中心の第2野党は共同党首を含む国会議員13人を逮捕・投獄され、壊滅状態に追い込まれた。最大野党・共和人民党のクルチダルオール党首は「(建国の父)アタチュルクでさえ手にしなかった権力を個人が握ろうとしている」と強く反発している。

 投票結果は欧州とトルコの関係に影響を及ぼす。欧州各国は異論を封じ込めるエルドアン政権への疑念を強めている。今回の国民投票にあたり、ドイツやオランダは現地に住むトルコ系住民に改憲への賛成を呼びかける集会の開催を禁じた。エルドアン氏は両国を「ナチス」と呼び、物議を醸した。

 エルドアン氏は欧州連合(EU)加盟の条件を満たすために廃止した死刑制度の復活や、EUと結んだ難民送還合意見直しも示唆した。投票結果にかかわらず、欧州とトルコの関係修復は難航する可能性が高い。

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