Financial Times

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

[FT]危険領域に足を踏み入れるトランプ大統領(社説)

2017/5/11 14:28
共有
保存
印刷
その他

Financial Times

 トランプ米大統領は、その気性や経歴、構想において、米国の政治制度にとってアウトサイダー的な存在だ。大統領選の候補者としては、それが同氏の魅力の根幹をなしていた。しかし、異質な存在であることに得意げになっている政治制度の中で、トランプ政権の成功は建設的に任に当たる氏の能力にかかっていた。コミー米連邦捜査局(FBI)長官の解任に続くであろう危機は、異質な大統領が改革を約束した政治制度を致命的に弱体化させる危険を明示している。

「クリントン私用メール」問題で指導力に疑問

トランプ米大統領によるコミー米連邦捜査局(FBI)長官解任で、様々な政治課題の進展の遅れが懸念される(10日、ワシントンのホワイトハウス前で、コミーFBI長官解任に抗議する人々)=ロイター
画像の拡大

トランプ米大統領によるコミー米連邦捜査局(FBI)長官解任で、様々な政治課題の進展の遅れが懸念される(10日、ワシントンのホワイトハウス前で、コミーFBI長官解任に抗議する人々)=ロイター

 少なくとも2016年11月以降、コミー氏を排除するだけの理由は十分にあった。コミ-氏は16年7月、クリントン元国務長官の私用メール問題で、訴追の証拠が不十分だったため捜査を打ち切ったと発表する役を買って出た。これは前例を破る行為で、司法省の権限を侵害した。その後、大統領選直前になってコミ-氏は、クリントン氏のさらなるメールが見つかったと発表し、捜査を再開した。だが、メールには重要な要素は何も含まれておらず、再捜査の発表は、つたなく、利己的なパフォーマンスでしかなかった。

 コミ-氏の指導力に対する疑問で、目の前にある危機の中核をなす事実から注意がそれてはならない。コミ-氏は9日午後まで、選挙中のトランプ陣営とロシア政府との関連について捜査の指揮を執っていた。したがって、トランプ氏は適正な手続きに介入し、法を超越する立場に自らを位置付けるという非難に身をさらすことになった。とんだ計算違いだ。

 トランプ氏がフリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)を更迭せざるを得なくなった際、トランプ政権はロシアに関する捜査の重大性を渋々認めた。セッションズ司法長官もまた、それまで公表していなかったロシア大使とのワシントンでの面会が明るみに出て、ロシアに関する捜査から身を引かざるを得なくなった。FBIが選挙期間中のロシアの介入について専任部署を立ち上げたことが、事の重大さを浮き彫りにしている。選挙中のトランプ陣営とロシアとの関係に関する疑問はなくなってもいなければ、なくなるべきでもない。

 コミ-氏解任という決定が、トランプ氏の政治課題全体を危険にさらしている。同氏は、医療保険制度改革法(オバマケア)代替案の上院可決を目指している。また、野心的な税制改革については、下院に提出できるようになるまでに具体化しなければならない。かつてトランプ氏が選挙戦のテーマに掲げたインフラ投資は、大統領当選以降ほとんど議論されていない。しかし、ロシア問題が解明されない限り、民主党が協力しない理由はいくらでもある。共和党は上院でわずかに過半を超える議席しか持っていないため、トランプ氏は自身の共和党内にいる反対議員の意向に左右される立場にある。

ロシア問題捜査で特別検察官の任命を

 しかし、最大の危険は政府の機能不全ではない。米政府はそうしたことは知り尽くしている。問題なのは、トランプ政権が概して自ら問題を招いている点だ。トランプ氏は慣例や伝統を軽視している。だがそうであっても、このように慎重さが求められる件で気まぐれに行動しては、トランプ氏に与えられた職責や政府自体に対する信頼が損なわれてしまう。ウォーターゲート事件と比較するのは時期尚早だが、トランプ氏は危険な領域に足を踏み入れてしまった。

 トランプ氏はかつて、その独立性でコミ-氏を褒めたたえたことがあった。そのコミ-氏を突然解任すると決定したことで、選択肢はなくなった。大統領は直接、間接的にもロシア捜査を監督することはできない。であれば、政権に捜査関与をさせないために、議会が選んだ委員会と並行して、特別検察官を任命することが唯一の解決策だ。

 イラン・コントラ事件やビル・クリントン政権のときをみても、特別検察官の歴史は完璧とはほど遠い。しかし、政治制度の尊厳は、非の打ちどころのないほどの独立した捜査にかかっている。共和党は国の利益を第一に置き、それを要求すべきだ。

(2017年5月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


人気記事をまとめてチェック

「ビジネスリーダー」の週刊メールマガジン無料配信中
「ビジネスリーダー」のツイッターアカウントを開設しました。
GlobalEnglish日経版

GlobalEnglish 日経版

世界を目指す、全てのビジネスパーソンに。 ビジネス英語をレベルごとに学べるオンライン学習プログラム。日経新聞と英FT紙の最新の記事を教材に活用、時事英語もバランス良く学べます。

詳しくはこちらから

Financial TimesをMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップビジネスリーダートップ

【PR】

Financial Times 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

EU離脱交渉で首席交渉官を務めるバルニエ氏=ロイター

ロイター

[FT]EU、英離脱で英語教師給与も徴収へ [有料会員限定]

 英国が欧州連合(EU)離脱にあたって支払う分担金は1000億ユーロに上ると推計されるが、EUは新たな請求を加える方針だ。EUが運営するエリート校にいる英国人教師の給与で、EU離脱後の2年間にわたる負…続き (5/26)

検閲強化で苦悩するフェイスブック=ロイター

ロイター

[FT]アジア諸国の検閲でソーシャルメディア苦悩 [有料会員限定]

 大手ソーシャルメディア企業が東南アジアで苦境に追い込まれている。タイの新国王やベトナムの共産党政権、インドネシアでの宗教間の緊張の高まりにより、ソーシャルメディアのコンテンツに対する締め付けが加速し…続き (5/26)

トランプ大統領の集会に集まったウェストバージニア州の市民ら。ダイナミズムで最下位だった同州は移民の割合のランキングで最下位だった=ロイター

ロイター

[FT]米国の活力低下、全州に広がる 移民の活用カギ [有料会員限定]

 創業が減少し、転職の頻度が下がったため、1990年代初頭以降、米国のすべての州で経済的ダイナミズムが広範に低下した――。起業家精神の力強さを取り戻す困難な課題を強調する調査研究で、こんな結果が明らか…続き (5/26)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

今週の予定 (日付クリックでスケジュール表示)

<5/22の予定>
  • 【国内】
  • 4月の貿易統計速報(財務省、8:50)
  • 5月のQUICK外為月次調査(11:00)
  • 西川自工会会長の記者会見(11:20)
  • 榊原経団連会長の記者会見(15:30)
  • 4月の主要コンビニエンス売上高(日本フランチャイズチェーン協会、16:00)
  • 【海外】
  • EU総務理事会で英離脱交渉の「交渉指令」採択
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<5/23の予定>
  • 【国内】
  • 閣議
  • 3月と16年度平均の毎月勤労統計確報(厚労省、9:00)
  • 4月の食品スーパー売上高(日本スーパーマーケット協会など、13:00)
  • 三村日商会頭の記者会見(13:30)
  • 4月の全国スーパー売上高(日本チェーンストア協会、14:00)
  • 4月の全国百貨店売上高(日本百貨店協会、15:00)
  • ソニー経営方針説明会
  • 【海外】
  • ブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事が講演(8:30)
  • 4月のシンガポール消費者物価指数(CPI)
  • 5月の仏製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値(16:00)
  • 5月の独PMI速報値(16:30)
  • 5月の独Ifo企業景況感指数(17:00)
  • 5月のユーロ圏PMI速報値(17:00)
  • 5月の米製造業PMI速報値(IHSマークイット調べ、22:45)
  • 4月の米新築住宅販売件数(23:00)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<5/24の予定>
  • 【国内】
  • 黒田日銀総裁とバーナンキ前米連邦準備理事会(FRB)議長が講演(都内、09:00)
  • 3月の景気動向指数改定値(内閣府、14:00)
  • 5月の月例経済報告(内閣府)
  • 株主総会=良品計画、イオン
  • 【海外】
  • タイ中銀が政策金利を発表
  • カナダ中銀が政策金利を発表(23:00)
  • 4月の米中古住宅販売件数(23:00)
  • 米エネルギー省の石油在庫統計(週間、23:30)
  • 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(5月2~3日開催分、25日3:00)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<5/25の予定>
  • 【国内】
  • 対外・対内証券売買契約(週間、財務省、8:50)
  • 3カ月物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 40年物国債の入札(財務省、10:30)
  • 桜井日銀審議委員が佐賀県金融経済懇談会であいさつ(佐賀市、10:30)
  • 桜井日銀審議委員が記者会見(14:00)
  • 4月の外食売上高(日本フードサービス協会、14:00)
  • 3月期決算=明治安田生命、住友生命、日本生命(三井生命を含む)、富国生命、朝日生命
  • 株主総会=Jフロント、セブン&アイ(いずれも10:00開始)
  • 【海外】
  • 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(5月2~3日開催分、3:00)
  • 石油輸出国機構(OPEC)総会(ウィーン)
  • 南アフリカ中銀が政策金利を発表
  • 米新規失業保険申請件数(週間、21:30)
  • ブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事がパネル討議に参加(23:00)
  • インドネシア市場が休場
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<5/26の予定>
  • 【国内】
  • 閣議
  • 4月の全国・5月の都区部消費者物価指数(CPI、総務省、8:30)
  • 4月の企業向けサービス価格指数(日銀、8:50)
  • シャープの中期経営計画説明会(15:10)
  • 11~4月期決算=HIS
  • 【海外】
  • 主要7カ国(G7)首脳会議(イタリア・シチリア島、27日まで)
  • 4月のシンガポール鉱工業生産指数
  • 1~3月期の米実質国内総生産(GDP、改定値、21:30)
  • 4月の米耐久財受注額(21:30)
  • 5月の米消費者態度指数(確報値、ミシガン大学調べ、23:00)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

[PR]