米雇用、力強さ欠く 年内利上げへ見極め

2016/10/8 1:06
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 【ワシントン=河浪武史】米労働省が7日発表した9月の雇用統計は強弱が入り交じり、米連邦準備理事会(FRB)は追加利上げに向けて当面データを見極める考えだ。FRB内には不動産市場の過熱を懸念する声があり、早期利上げ論もくすぶる。金融市場は年内の利上げの是非を注視するが、11月の大統領選も波乱要素となりかねず、米国の政治・経済動向に神経をとがらせている。

イエレンFRB議長は経済データを当面見極める構えだ(9月、ワシントン)=ロイター

 雇用統計は9月までの3カ月間の就業者の伸びが月平均20万人弱となり、一進一退が続く。高賃金職種である製造業の就業者が2カ月連続で減少したほか、運輸・倉庫業も3カ月ぶりにマイナスとなり、労働市場が完全に力強さを取り戻したとは言い難い。

 背景には企業部門の停滞感がある。米経済は国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費が好調だが、企業部門は設備投資が3四半期連続でマイナスになるなど、活発さがみられない。企業の先行き不安は、堅調だった雇用に調整圧力をもたらしている。

 もっともFRB内には雇用者の増加幅が月10万人を上回れば、利上げの条件を十分に満たすとの見方がある。労働市場は完全雇用に近づき、職を探す新規就業者の母数が減ってきたとみるためだ。利上げを見送った9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも、投票メンバー10人のうち3人が利上げを主張した。

 利上げ強硬派は「低金利が長引くことでの不動産の過熱リスク」(ボストン連銀のローゼングレン総裁)も懸念する。全米の商業不動産価格はピークだったリーマン・ショック前を2割も上回る水準にある。低所得者向けの「サブプライム自動車ローン」も膨らみ、一部市場にはひずみが生じている。

 ただイエレン議長は年内の利上げに前向きな姿勢を示しながらも「もう少しデータを見極めたい」と話す。就業者数が増えながらも失業率は改善しておらず、利上げ強硬派が主張する完全雇用に労働市場は達していないと疑問視するためだ。

 9月の雇用統計でも失業率は5.0%と再び悪化し、イエレン氏の懸念を裏付ける結果となった。完全雇用に近づかなければ賃上げ圧力は高まらず、物価全体も上がってこない。米景気は長期回復局面にあるものの、成長率は年平均2%と戦後の拡大局面で最も低い。急激な利上げに耐えられるだけの地力がない。

 利上げ判断に向けては、11月の大統領選も波乱要素となりかねない。世論調査でリードする民主党のヒラリー・クリントン候補が勝利すれば株高が進むとの見方があるが、過激な政策を掲げる共和党のドナルド・トランプ候補が逆転すれば市場に衝撃をもたらしそうだ。エネルギー政策や通商政策も選挙次第で大きく変わるリスクがある。

 FRBは9月のFOMCで「年内1回の利上げ」を中心シナリオと提示した。年内のFOMCは11月1~2日、12月13~14日の2回のみ。11月の会合は大統領選の直前のため、市場は12月の利上げを有力視する。米長期金利やドル相場は利上げを巡って乱高下しやすくなっており、当面はFRB高官の発言や米経済指標で相場が揺れる展開が続きそうだ。

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