難病治療研究の妨げにも 「ゲノムは個人情報」規定

2015/12/26 1:00
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 政府がゲノム(全遺伝情報)のデータやそこから読み取れる情報を個人情報と規定するのは、医療や産業応用の急加速が予想されるためだ。欧州連合(EU)などでも法制度の整備が進み、情報の相互利用のためには国内ルールを作り利用条件などを透明化する必要がある。ただ、研究者の間からは規制が厳しすぎると難病の治療研究などの妨げになるとの懸念も出ている。

 政府は「ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォース」で11月から議論を始めた。25日の会合で焦点となったのは、病気の診断結果などと関連づけた「ゲノム情報」の扱いだ。

 事務局を務める厚生労働省が示した「意見とりまとめ案」では、遺伝情報は「要配慮個人情報」と位置づけた。改正個人情報保護法によると、要配慮個人情報は特に慎重な取り扱いが必要で、本人の同意を得ない取得を原則禁止する。第三者への提供は原則本人の同意が必要となる。

 通常の個人情報は「オプトアウト」と呼ばれる手続きで第三者に提供できる選択肢があるが、要配慮個人情報では認めない。本人が知らないうちに情報が悪用されるといった事態を防ぐためだ。

 ゲノムの高速解読装置が普及し、コストも10万円を切るようになったのを受け、既に大学や研究機関では医療研究目的でゲノム情報の収集が進んでいる。これらが要配慮個人情報になると、国内外の他機関との研究協力などで情報をやりとりすることが第三者への提供とみなされ、禁じられる可能性がある。

 タスクフォースでは研究が滞り、難病の治療法開発などが遅れるのを懸念する声もあった。多くの場合、ゲノムのデータや情報の提供者に使用目的などを説明、同意を得ているが、過去の手続きを改めて確認する必要が出てくる。

 ゲノムを構成する塩基配列データそのものは「ゲノムデータ」と呼び、改正個人情報保護法に定める「個人識別符号」とする。

 ゲノムを個人情報と規定して保護すると、海外の遺伝子検査会社などによる日本人のゲノムデータや情報の活用の制限につながる可能性がある。日本で健康状態や体質を調べるサービスで集めたゲノムデータや情報が、意図しないうちに海外に流れるのを食い止める効果があるとみられる。

 海外の法制度では欧州連合(EU)の取り組みが進んでいる。EUデータ保護規則を整備中で、遺伝データを個人データと定め、匿名化したデータは適用外とする方向だ。遺伝情報の扱いに関しては明示していない。経済協力開発機構(OECD)のガイドラインは研究用遺伝子バンクなどについて遺伝情報を含む個人情報の保護の必要性などを指摘している。

 日本では個人情報保護法の改正時にゲノムに関する深い議論はなく、急ごしらえのタスクフォースで検討することになった経緯を問題視する声もある。ゲノムデータや情報の範囲は政府が来年1月に設置する個人情報保護委員会で決める予定。関係省庁のガイドラインも別途あり、具体的な内容は不透明な部分も多い。

(編集委員 安藤淳)

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