ビジネス最前線

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

陰る首都圏マンション販売 日銀頼み限界

2017/1/19 16:14
共有
保存
印刷
その他

 マンション市場の陰りが鮮明になってきた。不動産経済研究所(東京・新宿)が19日発表した2016年の首都圏のマンション市場動向によると、年間契約率は68.8%と前年に比べて5.7ポイント低下。好不況の目安とされる70%をリーマン・ショック後の2009年以来7年ぶりに下回った。昨年は、日銀のマイナス金利政策で住宅ローン金利が一段と低下する追い風が吹いたのに、なぜ不調に転じたのだろうか。

新築マンションが立ち並ぶ湾岸エリア(東京都中央区)
画像の拡大

新築マンションが立ち並ぶ湾岸エリア(東京都中央区)

■リーマン後以来の「70%割れ」

 2016年の1戸あたりの平均販売価格は前年比0.5%下落の5490万円。24年ぶりの高さだった2015年の平均価格5518万円から4年ぶりに値下がりした。それでも東京都区部の平均では6629万円、神奈川県でも5039万円と、5000万円の大台を上回っている。首都圏の平均価格が4000万円台半ばにとどまっていた2012年後半までと比べればなお2割ほど高い。

 サラリーマンの所得がそれほど大きく増えない中、続いてきたマンション価格の高騰。リーマン・ショック後以来の「契約率70%割れ」は、マンションが高根の花になりつつあることを示している。

 なぜ、これほどマンションの販売価格が上がってしまったのか。資材価格や人件費など建設コストの上昇が販売価格に転嫁されたことが原因だが、それだけではない。ここ数年、マンション市場の需要と供給とは違う力学が働き、不動産価格の上昇に影響を与えた可能性が高いのだ。

■「異次元マネー」が不動産へ

 きっかけは2013年4月。日銀の黒田東彦総裁がデフレ脱却を目指して打ち出した「異次元緩和」にある。日銀はこの政策により、直前に134兆円だった資金供給量(マネタリーベース)を2016年末までに426兆円へと3倍超にまで膨らませた。この異次元緩和によって世の中にあふれ出したお金が向かった先が不動産業だった。

 日銀が四半期ごとに公表する「貸出先別貸出金」を見れば、それがよく分かる。国内銀行の不動産向け融資残高は2016年9月末時点で69兆6698億円と統計を遡れる1970年以降で最大となった。

 日銀が異次元緩和を始める直前の2013年3月末と比べて、不動産向けの融資残高は13.8%増えた。同じ期間に製造業向け融資残高はわずか0.7%しか増えなかった。異次元緩和の資金が不動産業により多く流入したのは明らかだ。

■担保主義が拍車

 銀行側としても、製造業をあえて避けたわけではない。少子高齢化の中で需要が縮小する製造業の多くは国内の設備投資に慎重。金融緩和で借り入れコストが下がっても資金需要は大きく伸びない。

 かといって、起業したばかりのスタートアップを含むベンチャー企業などへの融資は貸し倒れリスクもあり、多くの金融機関は及び腰になりがちだ。こうした中、不動産を担保にとれる不動産業への融資は相対的に貸し出しがしやすい。金融機関の担保主義が不動産向けの融資を増やし、首都圏のマンション価格の上昇を後押しする一因になったともみられる。

 だが、マンション契約率の低下と平均価格の下落は、「日銀の金融緩和頼み」の市場活況に限界が訪れたことを示唆しているのではないか。

■金融政策変更で住宅ローンに変調

 潮目の変化を決定づけたのが、昨年9月。日銀の金融政策の変更だったかもしれない。日銀は長期金利を新たに操作対象とする「長短金利操作」を打ち出した。この決定は、想定以上に下がり過ぎた10年超の長期金利の水準を是正したいという意向があったが、長期金利に連動する住宅ローンの利用者にとっては悩ましい話だった。

 マイナス圏にあった長期金利がプラスの水準に戻り、住宅ローン金利は昨年8月を底に下げ止まる。そして、足元では小幅ながらも上昇傾向にある。この結果、主要行の住宅ローン申込件数も減少傾向に転じた。

 これまでのマンション市場の堅調さが実需に裏打ちされていれば、足元で見られる小幅な金利上昇が販売に大きく影響することはないだろう。だが、異次元マネーと低金利時代を当て込んでいたのなら、マンション市場の「需給調整」はやむを得ない。

(浜美佐)


人気記事をまとめてチェック

「ビジネスリーダー」の週刊メールマガジン無料配信中
「ビジネスリーダー」のツイッターアカウントを開設しました。

ビジネス最前線をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップビジネスリーダートップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!

【PR】

ビジネス最前線 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

中期経営計画を発表するシャープの戴正呉社長(26日午後、堺市)

シャープ中計、売上高3.25兆円 過去最高水準めざす

 シャープは26日、2019年度を最終年度とする中期経営計画を発表した。売上高で3兆2500億円、営業利益で1500億円を目指す。売上高、営業利益ともに過去最高だった07年度に近い水準まで引き上げる意…続き (5/26)

大正製薬、表参道にエナジードリンク専門バー

 東京・表参道に、大正製薬のエナジードリンク「RAIZIN(ライジン)」のバーが27日から6月8日までの期間限定で登場する。26日、同社が施設を報道陣に公開した。エナジードリンク専門のバーをメーカーが…続き (5/26)

運動体験などを通じて地域住民との関係を構築する(三重県松阪市のダイハツ三重販売松阪船江店)

高齢者事故を防げ 軽のダイハツ、自治体とタッグ

 ダイハツ工業が高齢ドライバーによる交通事故低減に向けた改革に乗り出した。全国の販売店が地方自治体と協力して地域に暮らす高齢者を集め、運転機能を維持するための運動体験や車を使った講習を実施する。ダイハ…続き (5/26)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

今週の予定 (日付クリックでスケジュール表示)

<5/29の予定>
  • 【国内】
  • 5月のQUICK債券月次調査(11:00)
  • 【海外】
  • 中国本土(上海・深セン)や台湾市場が休場
  • ロンドン市場が休み
  • 米国はメモリアル・デーの祝日で全市場休場
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<5/30の予定>
  • 閣議
  • 自動車8社の生産・販売実績
  • 4月の完全失業率(総務省、8:30)
  • 4月の有効求人倍率(厚生労働省、8:30)
  • 4月の家計調査(総務省、8:30)
  • 4月の商業動態統計速報(経済産業省、8:50)
  • パナソニックの「IRデイ2017」(9:30)
  • 2年物国債の入札(財務省、10:30)
  • 小林同友会代表幹事の記者会見(13:30)
  • 進藤鉄連会長の記者会見(17:00)
  • 中国や香港、台湾の各市場が休場
  • アジア最大級のIT(情報技術)見本市「台北国際電脳展」(コンピューテックス台北)が開幕(6月3日まで)
  • 5月の独消費者物価指数(CPI)速報値
  • 4月の米個人所得(21:30)
  • 4月の米個人消費支出(21:30)
  • 3月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(22:00)
  • 5月の米消費者信頼感指数(23:00)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<5/31の予定>
  • 4月の鉱工業生産指数速報(経済産業省、8:50)
  • 4月の建設機械出荷額(日本建設機械工業会、12:00)
  • 4月の自動車生産・輸出実績(自工会、13:00ごろ)
  • 4月の住宅着工戸数(国土交通省、14:00)
  • 稲野日証協会長の記者会見(14:30)
  • 経団連の定時総会
  • 榊原経団連会長の記者会見(16:30)
  • 5月の為替介入実績(財務省、19:00)
  • 5月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI、10:00)
  • 5月の中国非製造業PMI(10:00)
  • 5月の独失業率(16:55)
  • 4月のユーロ圏失業率(18:00)
  • 5月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値(18:00)
  • 5月のシカゴ購買部協会景気指数(PMI、22:45)
  • 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
  • ブラジル中銀が政策金利を発表
  • 海外2~4月期決算=ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<6/1の予定>
  • QUICKコンセンサスDI(5月末時点、8:30)
  • 1~3月期の法人企業統計(財務省、8:50)
  • 対外・対内証券売買契約(週間、財務省、8:50)
  • 3カ月物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 10年物国債の入札(財務省、10:30)
  • 原田日銀審議委員が岐阜県金融経済懇談会であいさつ(10:30)
  • 5月の新車販売(自販連、14:00)
  • 5月の軽自動車販売(全軽協、14:00)
  • 4月期決算=伊藤園
  • インドネシア市場が休場
  • 4月の豪小売売上高(10:30)
  • 5月の財新中国製造業PMI(10:45)
  • 5月の米新車販売台数
  • 5月のADP全米雇用リポート(21:15)
  • 4月の米建設支出(23:00)
  • 5月のサプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数(23:00)
  • 海外2~4月期決算=ブロードコム
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<6/2の予定>
  • 閣議
  • 5月のマネタリーベース(日銀、8:50)
  • 三村日商会頭の記者会見(11:00)
  • 5月の消費動向調査(内閣府、14:00)
  • 5月の財政資金対民間収支(財務省、15:00)
  • 5月のインドネシア消費者物価指数(CPI)
  • 5月の米雇用統計(21:30)
  • 4月の米貿易収支(21:30)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

[PR]