「文庫X」もう読んだ? 書名や著者名隠して販売

2016/9/7 12:20
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 タイトルや著者名、出版元……。通常は本を買う手掛かりとなる情報を手書きの表紙で覆い隠し、「文庫X」と銘打った謎の本が快調に売れている。発信地は盛岡市の書店だが、試みは全国12都道府県に拡散し、さらに広がる勢いをみせている。

 7月下旬、JR盛岡駅の駅ビルにある、さわや書店フェザン店。店員の長江貴士さん(33)は、ある文庫本の売り方を思案した末、表紙を客への手書きメッセージで覆って店頭に並べた。

 メッセージは「申し訳ありません。僕はこの本をどう勧めたらいいか分かりませんでした」という謝罪から始まり、「心が動かされない人はいない、と固く信じています」と訴えている。本はビニールで包装されており、価格が810円で「小説ではない」ことしか分からない。

 長江さんは「私は読んで感動したけれど、タイトルを見て手に取らない人がいるかもしれないと考えた。表紙を隠すのは、いつか使いたいと思って取っておいたアイデアです」と語る。案の定、客からは「こうしてくれなかったら出会わなかった」と感謝する声が寄せられたという。フェザン店では、1カ月余りで約980冊が売れる大ヒットとなった。

 「文庫X」の“正体”は同一の本。書店間のネットワークで、これまでに12都道府県に「文庫X」の企画が拡大、版元には7月下旬以降、7千部を超える注文があり、さらに増え続けているという。

 出版不況が続く中、ごく一部のベストセラーを除いて書籍の販売は低迷している。またネット書店の台頭によって「街の本屋さん」は苦境にある。ネット上の「レビュー」が購入の参考にされる風潮が強まる中で、書店員のメッセージだけをよりどころに本が次々と売れていく動きは異例だ。

 版元の広報担当者は「本への思い入れが強い書店員さんがいて、それに耳を傾ける読者がいることがうれしい。この信頼関係に感動し、ありがたく思います」と話している。〔共同〕

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