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「つながる世界」だからこそ必要な危機感

2016/4/21 3:30
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 自動車や家電など様々なものをインターネットにつなぎ、新しい市場を生み出そうという機運が高まっている。IT(情報技術)を生かす取り組みは大切だが、忘れてならないのは、かつてない規模でネットが浸透する社会の安全をいかに守るか、という視点だ。

 政府の産業競争力会議は、人工知能や大量のデータを活用しながら成長をめざす戦略を掲げ、この分野に投資する企業の動きも広がる。2020年には世界で300億にのぼる機器がネットで結ばれると予想されている。

 新種の製品やサービスによって利便性が高まり、国の力も向上すると期待できる。その一方で、サイバー攻撃の標的になるリスクは広がり、深まる。情報の漏えいや悪意による遠隔操作で生命や財産が危険にさらされかねない。

 ネットに接続する製品やサービスを手がける企業は、安全対策を徹底する必要がある。社内の情報システムを守れば十分という時代は、終わりつつある。そういう自覚がいま、求められている。

 残念ながら、日本企業の対応は心もとない。情報処理推進機構の調べによると、ネット家電や自動車の安全を守るための基本方針を明確に定めている企業は、昨年時点で5割を切る。サイバー攻撃対策にリーダーシップを発揮する経営者が少ない。

 近年サイバー空間では巧妙な手口を使うハッカー集団の攻撃が目立つ。国家の後ろ盾が疑われる例さえある。これまでにない発想や体制で相当の努力をしなければ、効果的な防御は望めない。

 例えばイスラエルでは、企業が大学や軍と協力してセキュリティー技術を磨く。自動車のハッキングを防ぐ製品をつくるベンチャーもある。米国の大手メーカーやIT会社はイスラエルに拠点を設けて先端的な研究を進めている。

 鉄道や発電所といったインフラもハッカーにねらわれやすい。安全面の備えが不十分な製品やサービスは顧客に信用されない。インフラ輸出に力を入れる日本企業は、セキュリティー対策の巧拙が競争力を左右することを認識して、手を打つ必要がある。

 有力企業が人材の育成で連携するなど日本でも前向きな動きはあるが、まだ足りない。「つながる世界」の安全をどう確保するか。垣根を越えて連携の輪を広げ、技術開発や事業モデルの創出を急がなければならない。

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