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あなたは最近失敗するような挑戦をしていますか
伊佐山 元(WiL共同創業者兼最高経営責任者)

2016/3/22付
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 最近、シリコンバレーを訪問する日本人の学生や社会人の前で話す機会が増えている。多くの場合、最新のシリコンバレー事情などを話している。その中で私が彼らに必ず投げかけている問いがある。

いさやま・げん 1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

いさやま・げん 1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

 「あなたは何か失敗していますか」

 そう問いかけられて、すぐに何かを思い当たる人はかなり少ない、というのが私がこれまで得てきた感触だ。「そう言われてみると、何か失敗したかな」というのが日本人の学生や社会人のおおよその反応だ。

 この実態は、起業家精神やイノベーションを議論するうえで深刻な課題があることを私たちに示唆している。

 失敗というのは、自分で明確な意思決定をしない限り、意識することはない結果である。目標を設定しない限り、定義できない事象とも言えるだろう。

 自分ができることしかやらない人は、決して失敗することはない。失敗をしていないというのは、自分の能力を超える課題に挑戦していないことの証拠でもある。

 我々日本人は学校に入学した時から失敗しないように振る舞うことが求められる。ミスの一番少ない人間が優秀とみなされる。失敗経験の少ないエリートを量産するというこの教育制度は、右肩上がりの経済局面では効率的で素晴らしい仕組みだった。

 だが、際だった個性や発想を伸ばすことによって経済をけん引する力を生みだそうとするシリコンバレーのような社会では、日本の教育制度は全く使えない習慣になる。挑戦した結果としての失敗の多さが勲章になり得る――。このような環境が、少数ではあるが天才的な起業家を生み出しているのだ。彼らが米国の「イノベーションのエンジン」と呼ばれ、成熟した社会における経済成長の大きな力になっている。

 日本も米国と同様に成熟した社会になっている。教育現場や仕事場で自分の実力を超える課題に果敢に挑戦する人をもっと高く評価し、彼らが失敗しても救う仕組みがなければならない。それがなければ、ベンチャー精神やイノベーションをいくら議論しても不毛であることは明らかだ。

 私は日本人に失敗を奨励しているわけではない。難易度の高いことや自分が少し怖くなるくらいのことに挑戦して、結果的に失敗したとしても、そこから学び、もっと良い挑戦をしている限り評価する。そうした寛容の精神が社会全体に必要だということだ。

 私自身、子どもたちに「最近、何か失敗しているか」との質問を時折投げかけている。挑戦している子を前向きに評価し、平穏な生活をしている子には何か新しい挑戦をするように仕向けているのだ。自分自身にも十分な挑戦をしてるかどうかを定期的に問いかけるようにしている。

 電気自動車を開発しているベンチャー企業のテスラモーターズや民間宇宙旅行ベンチャーのスペースXを創業したイーロン・マスク氏もこう言っている。

 「何も失敗ごとが起こっていないのだとしたら、十分にイノベーションを起こしていない証拠だ(If things are not failing、 you are not innovating enough)」

 あなたは、最近失敗するような挑戦をしていますか。

[日経産業新聞2016年3月22日付]

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