伝えたい意思、自然な合成音声で アプリ開発秘話
「指伝話」のオフィス結アジア・高橋社長

2016/2/3 3:30
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 病気や事故で言語障害になっても伝えたいことがあるのは障害の有無とは関係ない。神奈川県藤沢市のソフト開発会社、オフィス結アジアの社長、高橋宜盟(50)はスマートフォン(スマホ)向け発声代行アプリ「指伝話」で障害者らのもどかしさをサポートする。

たかはし・よしあき 1965年愛媛県新居浜市生まれ。北海道教育大学旭川校卒。システムエンジニアとして勤務後、2012年から現会社で指伝話事業を開始。一般社団法人結ライフコミュニケーション研究所の理事も務める
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たかはし・よしあき 1965年愛媛県新居浜市生まれ。北海道教育大学旭川校卒。システムエンジニアとして勤務後、2012年から現会社で指伝話事業を開始。一般社団法人結ライフコミュニケーション研究所の理事も務める

 アプリは入力した文章をスムーズな合成音声で伝えることができる。男女4種類の声が選べ、3万字を超えても文字を自然なアクセントで読み続ける。開発のきっかけは満員電車で携帯電話に来たクレーム。周囲を気にして雑になりがちな応対も、スマホの操作で「今、電車の中です」「後で折り返します」と一言返せば、電話の向こうの機嫌も和らぐと考えた。

 しかし、アプリを絶賛したのは営業マンではなく、喉頭がんで声帯を失った男性医師だった。2012年に亡くなる直前まで診断で使い続けてくれた。医師は筆談ではなく、声を失う前と同じように患者との自然なやりとりを求めていた。用途は「全く考えていなかった」ところに広がり始めた。

 医師を介して知り合った言語聴覚士の女性は「これは脳梗塞や四肢まひ、失語症にも使える」と教えてくれた。絵カードを見せて単語を思い出す失語症のリハビリに使える機能や、決められた時間に「お薬の時間ですよ」などと知らせる認知症向けソフトなど、用途に応じて開発したアプリは7種類に増えた。

 開発で障害者と接するうち、「発声というコミュニケーションの手段を失った人は思考まで放棄したわけではない」という当たり前のことに気づく。四肢まひの筋ジストロフィー患者が、的確なソフトの改善案を提案してくれる。ALS(筋萎縮性側索硬化症)で寝たきりの女性が逆に「介護する夫が倒れた時に救急車を呼びたい」と購入したケースも。

 「事故や病気で伝えられない様々なアイデアを世の中に伝え、ビジネスに結びつけたい」。アプリはその手助けをしているにすぎないという認識が芽生えた。

 いつしか「障害者向けツール」と呼ばなくなった。14年にそのアイデアを取り扱う一般社団法人も設立。月1回、東京・品川で失語症患者の集まりにボランティア参加し、交流を続ける。「人として生きる以上、コミュニケーションの重要性を確保していきたい」

 音声による原稿の校正や極度のあがり症の人のプレゼン用など、今も新たな用途が次々と広がる。「使い方はあなた次第」という夢の先は続く。

=敬称略

(横浜支局長 和佐徹哉)

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