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日本の製造業にデジタルで新風を

2015/8/31 3:30
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 デジタル技術の進展が、製造業に変革を迫っている。あらゆるものをインターネットにつなぎ、大量のデータを使って新たなビジネスモデルを競う時代の到来だ。機器単体ではなくサービスと一体で売る知恵や、事業のスピード感を企業は問われる。

 日本の製造業の足元はしっかりしている。本紙の集計では、自動車や電機などの好調で4~6月期の純利益は、1年前より26%増えた。だが、油断はできない。長年の蓄積を無駄にしないためにも、競争ルールの変化にあった自己改造が必要だ。

独米中に後れとるな

 世界の動きは速い。ドイツは官民を挙げてIT(情報技術)をてこにした製造業の革新に乗り出した。部品の製造や組み立て、販売などの現場をネットワークでむすび、データを共有して需要の変動に柔軟に対応できる生産体制づくりをめざしている。

 モノのインターネットと呼ばれる潮流だ。製造業の復活をねらう米国では、大企業が手を組み、産業機器にセンサーを付け運用や保守に生かす試みなどが広がる。経済が減速する中国も、製造業のIT化に活路を探る。

 日本はどうか。コマツはブルドーザーなどの建設機械をITで熟練者並みに自動制御するしくみを実現した。生産設備のデータを分析し、品質向上に生かす繊維大手の東レのような例もある。

 問題はこうした動きが一握りの企業に限られることだ。コンサルティング会社アクセンチュアの調査によると、「収益源の創出にモノのネット化が役立つ」と考える経営者は世界全体で約6割に上るが、日本は3割にとどまる。

 日本の製造業が戦後の経済発展をけん引したのは間違いない。精密加工や品質管理のノウハウは財産だ。しかし、自信が過信になっては世界競争で埋没しかねない。旧来型の機器販売は、価格競争に巻き込まれやすい。デジタル技術で新風を吹き込み、新たな製造業へ踏み出すときだ。

 人工知能ベンチャー、プリファード・ネットワークス(東京・文京)の西川徹社長は「ITと製造業の連携で日本から新たな価値を提供したい」と語る。工作機械のファナックなど大手メーカーと協業し、高度な自動化技術などを開発するという。こうした試みはもっとあっていい。

 製造業を強くするデジタル技術は数多く、生かさない手はない。例えば、事業のアイデアをネットに投稿し、必要な資金を大勢から集めるクラウドファンディング。ものづくりに応用すれば、投資リスクを抑えながら、実験的な製品投入に挑みやすい。

 ソニーが出資するベンチャー企業は、ドアのカギをスマートフォンで開け閉め可能にする電子機器の商品化にクラウドファンディングを使った。うまく利用することでベンチャー、さらには個人にも製造業の担い手を広げられる。

 仕事を外注したい企業と、受注したい個人をネットで仲介するクラウドソーシングも使いこなしたい。ユニークな素材や加工の技術を持ちながら事業化できずにいる企業は多い。ネットでソフト開発やデザインを頼めば、新たなものづくりにつながるだろう。

人材育成が課題に

 このサービスの大手クラウドワークスには、ITなどの技能を持つ働き手70万人が登録する。ネットを通じて社外から英知を取り込み、事業スピードをあげる。自前主義に陥らないオープンな姿勢は製造業の刷新に生きるはずだ。

 ロボットや身につけるウエアラブル端末など、工場で働く人を助ける技術にも期待したい。人手不足を補うだけではない。画一的な作業から解放され、創造的な仕事に注力できる環境は、イノベーションを起こすのに重要だ。

 さらに、将来を担う人材の育成が欠かせない。これからの製造業は斬新なビジネスモデルを編み出す発想力が一段と大切になる。だが、そうした人材が必要と考える企業の7割が実際は確保できていないとIT人材白書は指摘する。

 子どもにプログラミングを教えるNPO法人CANVAS(東京・台東)は、ドローン(無人飛行機)やロボットの操作など、デジタル時代のものづくりをみすえた教育に取り組む。石戸奈々子理事長は「産業を生み出す力を育む」と話す。こうした人材の育成に、企業は積極的に関わるべきだ。

 日本の製造業は1千万人が働く中核産業である。政府はIT活用を成長戦略に掲げる。世界に手本を示す気概で製造業を21世紀型につくりかえなければならない。

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