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イスラエル進出のワケ 雇用で紛争の根を断つ
サムライインキュベート社長 榊原健太郎

2015/7/2付
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 IT起業家の育成支援に取り組んでいるためなのか、なぜイスラエルに進出したのかという質問を山ほど受ける。その度に私はイスラエルがスタートアップ大国だからと答える。米フェイスブック、米グーグル、米マイクロソフトなど世界の名だたるテクノロジー企業から熱視線を浴びているほどだ。

74年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て00年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業
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74年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て00年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業

 しかし、私にはスタートアップ支援を超えた目標がある。今回のコラムでは、イスラエルに進出を決めたもうひとつの理由をお話しようと思う。私は「紛争」という大きな問題を解決したいのである。

 そもそも紛争が起こる根源は貧困にあると思っている。困窮して満たされない状態に人々が陥るから、犯罪や紛争が起きてしまうのだ。

 経済学者の大竹文雄氏の研究によると、貧困率の上昇が犯罪や紛争の増加をもたらす傾向があるという。では、どのようにして解決すればいいのだろうか。

 私はその解決のためのカギは雇用を生み出すことにあると強く思っている。

 先日、米国の有力ベンチャーキャピタルであるセコイアキャピタルのキャピタリストと話をする機会があった。セコイアキャピタルは米アップルやグーグルに創設時から投資したことで知られている。

 彼はイスラエルのトレンドをこのように解説してくれた。それは「より少ない人数でも世の中を変えることができるテクノロジー」だ。

 確かにイノベーションを起こすうえでそれは正しい。効率性がなければイノベーションとは言えないからだ。

 ただ、私は平和を実現するには別のアプローチが必要ではないかと感じている。

 それは長期雇用だ。普通の生活が営めるほどの給料を支払えるような雇用を増やしていけば、紛争の減少をもたらすことができると思っている。セコイアキャピタルのキャピタリストが言ったトレンドとは反するかもしれない。

 こう思った1つのきっかけとして、イスカルという企業との出会いがある。イスカルは、米国の著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が買収したイスラエルの超硬切削工具メーカーだ。バフェット氏が買収した初めての米国以外の会社でもある。

 バフェット氏はイスカルを通じて、タンガロイという福島県いわき市にある切削工具メーカーを買収している。2011年にはタンガロイを視察するため、初来日も果たしている。

 バフェット氏がこの2社にほれ込んだのは、長期的な成長が見込めると感じたからである。

 バフェット氏は一過性のイノベーションではなく、会社を長期間にわたって継続できるほど魅力的かどうか、という視点で投資先を決めている。それが経済合理性にもかなうからだ。

 イスカルやタンガロイは従業員の立場まで考え、100年を超えて続く会社を目指している。だからこそ、長期投資を旨とするバフェット氏の目にかなったのだ。

 イスカルでは、宗教や人種を問わず雇用している。ユダヤ人だけでなく、イスラエル国内のアラブ人、ドルーズ人などの宗教の異なる人々も、平等に雇用し共通の目的のもとに会社を運営している。

 私は、この考え方に共感している。スタートアップ支援を通し、このような雇用ができる企業をたくさん生み出していけば、貧富の差が是正されて平和につながると思っている。

 長期雇用は日本企業が得意とする点だろう。イスラエル人が日本企業から学んでほしいところでもある。イスラエルはこのような雇用を重んじる企業文化を輸入し、平和を実現させてほしい。

[日経産業新聞2015年7月2日付]

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