日韓歴史認識問題とは何か 木村幹著 「暗黙の了解」崩した関係の変化たどる

2014/12/15付
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 「歴史認識問題がどのように展開されるかは、議論の対象となっている過去の事実そのもの以上に、議論の対象となっている過去の事実が、それぞれの時代においてどのように解釈され、どのような意味づけを与えられていくかによって決まっていく」。著者は本書の随所で何度もこう強調する。

(ミネルヴァ書房・2800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
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(ミネルヴァ書房・2800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 本書は、「どうしてこの問題がここまでこじれてしまったのか」を論理的に解明しようとする研究書である。「直感的な洞察」に依拠せず、「分析の枠組み」をしっかりと提示する難解な作業に取り組んでいる。

 歴史認識問題に発展するまでには、ある事象をめぐって、(1)その意味付けが発見される段階、(2)異なる人々が異なる認識を形成する段階、(3)大きな重要性を獲得してゆく段階――の三段階があると、明快だ。

 たとえば「慰安婦」問題を例にしよう。韓国の歴代政権でも横たわっていた「過去」なのに、なぜ朴槿恵政権が同問題で強硬姿勢に出ているのか。良好な対日関係維持よりも同問題を提起し続けることが重要な段階との判断からであろう。

 「一九八〇年代以降の日韓歴史認識問題の展開過程は、韓国における日本の圧倒的重要性を基礎とした両国エリート間の暗黙の了解が、国際環境の変化と世代交代により崩れていく過程に他ならなかった。こうして日韓関係はエリートによってコントロールされる時代から、一般の人々を中心とする世論が直接ぶつかり合う事態へと移行した」との一定の結論を導き出す。

 これを証明するために、日韓両国の時代別政治・社会状況への深い洞察、新聞記事や各種世論調査の分析はもとより、貿易量や出入国者数といった統計までも検討の対象とする貪欲な姿勢には脱帽である。日韓関係全般を見渡せる書となっている。「日本と韓国のどちらが正しいか」といった単純な問いをしておらず、数々の「言説」を冷静に排する論の展開にも説得力がある。

 歴史認識問題を緩和しうる所見も本書は提言する。「韓国における日本の圧倒的重要性」が戻ってこないのだから、「行うべきは自らの重要性を相手側に今一度理解させ、我々と協力するインセンティブを再構築することである」と。「『研究者』の目的は事実を明らかにすることであり、そこにおいて何かしらの政治的予断を挟むことは絶対に許されない」という、プロ意識が強い著者の主張だけに示唆する点が多い。

(静岡県立大学教授 小針 進)

[日本経済新聞朝刊2014年12月14日付]

日韓歴史認識問題とは何か (叢書・知を究める)

著者:木村 幹
出版:ミネルヴァ書房
価格:3,024円(税込み)

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