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「核なき世界」へ問われる日本の覚悟

2017/8/6 2:30
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 広島はきょう、長崎は9日が72回目の「原爆の日」だ。

 核兵器廃絶という究極の理想を堅持しつつ、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射や核弾頭の技術開発など現下の安全保障情勢を直視し、唯一の戦争被爆国として何をなすべきか。鎮魂の日に、改めて熟考したい。

 政府は先月、国連本部で122カ国の賛成で採択された核兵器禁止条約に参加しなかった。日本は被爆国でありながら、安全保障を米国の「核の傘」に依存する。核抑止力を直ちに否定するのは難しい、との判断だ。

 米英仏は「(条約は)北朝鮮の核開発計画という深刻な脅威に解決策を示さないばかりか、核抑止力を必要とする状況にも対応していない」と反対。核保有国と非保有国の対立が鮮明になり、条約は実効性を失った。被爆者からは失望の声があがった。

 昨年5月、現職の米大統領として初めて広島を訪れたオバマ氏と抱擁を交わした男性がいる。会社勤めを続けながら、被爆死した米兵捕虜の存在に光を当てた同市の歴史研究者、森重昭さん(80)だ。

 核兵器禁止条約に参加しない政府方針について森さんは、「被爆国として大いなる矛盾だが、日本の安全保障を考えればやむを得ないのだろう」。理想と現実のはざまで揺らぐ胸中を明かした。

 爆心地から2.5キロの橋の上で被爆し、「黒い雨」を全身に浴びた。「強烈な爆風で川に吹き飛ばされたが、九死に一生を得た。命ある限り核の恐ろしさを啓蒙し続けたい」との決意も新たにする。

 核廃絶の理念を追求しながら、差し迫る北朝鮮の核の脅威にどう対処するのか。政府は条約不参加の理由や、今後の核軍縮に向け日本が国際社会で果たすべき役割を、もっと丁寧に説明すべきだ。被爆者への責務である。

 核拡散防止条約(NPT)の運用状況を点検するため、加盟国が5年ごとに開く再検討会議が2020年にある。15年は核保有国と非保有国が対立したため、最終文書を採択できずに閉幕した。

 政府は次期会議に向け、保有国、非保有国から有識者16人を招いた「賢人会議」を設置した。双方の溝を埋める新たな取り組みだ。

 被爆者の平均年齢は81歳を超えた。その肉声を発信することのできる時代はやがて終わる。核軍縮議論をいかに前進させるのか。日本の覚悟が問われている。

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