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改造内閣への注文(下) 経済最優先の原点に戻って改革を

2017/8/5 2:30
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 2012年末に発足した安倍晋三政権は日本経済の再生を掲げ、その経済政策「アベノミクス」は流行語となった。それから4年半が過ぎ、雇用や企業業績は改善したが、中長期の持続的な経済成長につながる改革は道半ばだ。

 内閣改造を機に、首相はその言葉通り「経済最優先」の初心に帰って政策に取り組むべきだ。

持続可能な成長戦略を

 安倍首相は政権発足時にアベノミクスの3本の矢を掲げた。第1が大胆な金融政策、第2が機動的な財政政策、第3が規制改革を含む成長戦略だ。安倍政権が経済再生に強力な政策を進めるという発信が、企業心理の好転につながり、海外投資家の日本経済を見る目を変えたのは事実だ。

 法人実効税率の引き下げや電力・ガス小売市場の自由化、コーポレートガバナンス(企業統治)改革、農協改革、外国人訪日客の拡大など、一定の成果をあげた政策もある。

 環太平洋経済連携協定(TPP)への参加や、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の大枠合意など、通商政策でも前進があった。

 日銀が掲げた2%の物価安定目標にはなかなか届かないが、物価が持続的に下落するデフレの状況からは脱し、企業収益や雇用情勢は大きく改善した。足元の経済状況は4年半前に比べれば好転したが、課題はなお多い。

 経済指標が改善しているとはいえ、まだ日銀の大量国債購入など異例の金融緩和や財政刺激策に支えられているなかでの景気回復である。首相は5月、憲法改正を優先課題として打ち上げたが、それよりも経済再生を優先し貫徹してほしいと国民の多くは望んでいるのではないか。

 改造内閣の閣僚の顔ぶれをみると各分野に精通した人物の起用が目立つ。首相と経済政策を担う閣僚には、目先の景気だけではなく将来世代への責任を直視した経済再生に取り組んでほしい。

 首相はこれまで2020年を意識した発言をしばしばしてきた。東京五輪開催の年であり、その年を目標に様々な開発プロジェクトなどが進んでいる。

 だが、日本は東京五輪で終わるわけではない。五輪特需後のその先に難題が多いのだ。25年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、医療費は急増する。

 社会保障費の伸びを抑えながら、巨額にのぼる国の借金を減らし、財政健全化を進める必要がある。高齢者への給付抑制や消費税率上げなど負担増の議論から逃げるべきではない。真の経済再生とは、中長期的に持続可能な経済成長の道筋をしっかり示し、その歩みを着実に進めることだ。

 それには、労働生産性を上げ潜在成長力を高めると同時に、社会保障改革や財政再建の見取り図を示し若年層が抱く将来の負担増への不安を払拭することが重要だ。足元の景気を良くしても、将来世代に大きなツケを残すのでは、責任ある政策とは言えない。

 その点で気になるのは支持率低迷に悩む安倍政権が目先の人気回復をねらってバラマキ政策に出る恐れがあることだ。

将来世代へツケ回すな

 首相は7月下旬の講演で、教育無償化の財源として教育国債を排除しない考えを示した。人材への投資は重要だが、そのために借金を膨らませ将来世代に負担をおしつけるのであれば問題だ。建設国債で賄う公共事業も、現在の建設現場の人手不足を考えれば、むやみに拡大すべきではない。

 経済最優先といっても、従来型の金融・財政刺激策の追加が求められているわけではない。景気が好転している今は、技術革新や生産性向上につながる規制改革、中長期の成長に向けた構造改革を断行すべき時だ。

 雇用環境が良好で企業の倒産も少ない今こそ、不況期には難しい雇用市場の改革などに取り組まなければならない。

 加計学園問題などで議論になった国家戦略特区も、既得権益層の抵抗の強い岩盤規制を突破するのには有効な手段だ。透明性を確保したうえで、成長力の強化につながる規制改革はさらに加速してほしい。

 安倍政権が再び経済最優先に戻り、将来世代もにらんだ経済改革を進めるならば、国民の政権を見る目もまたかわるのではないか。

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