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改造内閣への注文(上) 政権への信頼の回復こそが急務だ

2017/8/4 2:30
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 政権の浮沈を決める布陣ということになるのだろう。安倍晋三首相が3日、内閣改造・自民党役員人事に踏み切った。内閣支持率が急落するなか、挙党体制を意識した安定重視の布陣だ。有権者の信頼を取り戻し、政策を着実に実行できるのかが問われる。

 「安倍1強」体制は数カ月前までなお盤石に見えた。だが評価は一変し、いま政権は発足以来の正念場を迎えている。

政権のおごりへ批判

 自民党は7月2日投開票の東京都議選で歴史的な惨敗を喫した。日本経済新聞社とテレビ東京の共同調査で4月まで60%を超えていた安倍内閣の支持率は、7月下旬に39%まで低下した。

 支持率の急落はマイナス要因が重なって起きた。学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地の格安での払い下げと、学校法人「加計学園」(岡山市)だけに獣医学部の新設を認める決定に、国民の多くは強い違和感をもった。

 森友学園は安倍昭恵首相夫人が名誉校長を務めていた。加計学園の理事長は、首相が飲食やゴルフをよく共にする長年の友人だ。野党が政治の圧力や官僚の忖度(そんたく)を追及しても、政権内には説明責任を丁寧に果たそうという意識が欠けていた。

 閣僚の不適切な言動も追い打ちをかけた。なかでも防衛相だった稲田朋美氏は都議選で自衛隊が自民党候補を応援しているかのような演説をし、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報隠蔽問題で辞任に追い込まれた。

 多くの国民が一連の問題の根本に、4年半を超えた長期政権のおごりや緩みを感じている。個別の政策への賛否ではなく、政権そのものへの不信感の高まりという点で状況はより深刻だと言える。

 首相は今回の改造・党人事を通じて、態勢の立て直しを急ぐ。麻生太郎副総理・財務相や菅義偉官房長官、二階俊博幹事長という政権の骨格は維持。一方で岸田文雄前外相を政調会長に起用し、後任の外相に河野太郎氏、防衛相には小野寺五典氏を充てた。

 自民党の入閣待望組の処遇やサプライズ人事で世論受けを狙うよりも、専門性と経験を重視した実務型の布陣は妥当だといえる。現政権の下で雇用や企業収益は改善したが、成長力の底上げや財政健全化への取り組みは遅れている。難しい課題に結果を出せるかどうかが新内閣の評価を決める。

 野党から国会で追及されることの多かった閣僚はそろって閣外に去った。しかし獣医学部新設や日報隠蔽の経緯はなお不透明で、閉会中審査などを通じて真相を解明する必要がある。今回の人事が「疑惑隠し」につながるようなら、政権の信頼回復にむしろ背を向けることになる。

 日本を取り巻く外交や安全保障の状況は日増しに厳しくなっている。北朝鮮は今年に入り弾道ミサイルの発射実験を加速し、複数の同時発射や高高度、長射程の技術開発にメドをつけつつある。核・ミサイル開発が深刻な脅威であるにもかかわらず、中国やロシアは北朝鮮への厳しい制裁に及び腰の対応を続けている。

北の脅威、待ったなし

 中国は南シナ海を着々と軍事要塞化している。日本の再三の抗議にもかかわらず沖縄県の尖閣諸島に公船を派遣し、東シナ海で一方的なガス田開発を加速している。

 河野外相と小野寺防衛相は日米同盟の絆を再確認するとともに、国際社会の結束に向けてさらに努力する必要がある。日報問題で幹部が入れ代わった防衛省・自衛隊の組織立て直しも喫緊の課題だ。

 首相は憲法9条の改正による自衛隊の明記を柱とする改憲案の早期取りまとめを自民党に指示している。ただ教育無償化の明記などには与党内にも異論が多い。経済・財政や安全保障政策への取り組みが後回しになるような政権運営は避けるべきである。

 先の通常国会ではアベノミクスの評価や北朝鮮の脅威にどう向き合うかという重要な政策論争がかすみ、森友、加計両学園の問題をはじめ閣僚の資質や問題発言にばかり焦点があたった。

 支持率が低迷する民進党は蓮舫代表の辞任表明を受けた代表選びが事実上始まった。与野党がより高いレベルで政策を競い合わなければ、日本の明るい未来は開けない。政治の信頼回復には地道な努力を積み重ねていくしかない。

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