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年金不安解消へ、2つの道を提案
ライフネット生命保険創業者 出口治明

2017/8/3付
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 僕は、自ら立ち上げたライフネット生命を、1人でも多くの世の中の人々に、よりよく知ってもらうために、10人以上集めてもらえれば、全国どこへでも講演にうかがうようにしている。講演では、生命保険の考え方や付き合い方に関する疑問にも答えているが、最近は公的年金保険(年金)に関する質問を多くいただくようになった。

1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、72年に日本生命保険入社。08年ライフネット生命保険開業。13年6月より現職。

1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、72年に日本生命保険入社。08年ライフネット生命保険開業。13年6月より現職。

 年金に関する質問の中には、誤解に起因しているものがかなり多く含まれている。今回は年金について僕なりの見解を述べさせていただく。

 質問の中で最も多いのは「年金が破綻するかもしれないので将来が不安だ」というものである。この問いについて、現在の年金の仕組みから考えてみたい。

 まず、年金保険料が1年間に34兆円ほど徴収される。次いで、基礎年金の半分は国が負担することと法律で決められているので12兆円ほどが国庫から支出される。さらに、過去からためてきたお金が175兆円ほど存在する。これは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用していて、株高でもうかったとか、株安で損したなどと報道されているものだ。

 家計に置き換えてみると、夫の給与が34万円、妻の給与が12万円、貯金が175万円あるという状況だと考えてもらえばいい。1年間に支払われる年金の額は51兆円ほどなので、家計であれば51万円を使っているということだ。

 あなたの家計で支出の51万円が今後も増えていくと予想される場合、あなたはどうするだろうか。支出を抑えようとするのではないか。年金の支払いを減らすということだ。これについては、「生活ができなくなる」など反発の声が上がることが容易に想像される。

 ただ、方法はいくつもあると僕は考える。一律に皆さんの年金を削減するのではなく、年金が必要でない人のみ削減すればいい。一定水準以上の所得や資産がある人は、年金が払われなくとも、必ずしも生活には困らないはずだ。ならば、マイナンバーを活用して一定の資産や所得のある人には年金を支給しない仕組みにしてはどうか。

 「本当に困っている人のみに分配する」という本来の保険の役割に立ち返ることで年金を効率化(削減)できないか。それでも足りない場合は、国庫負担を増やせばいい。最後が年金保険料の引き上げだ。

 家計で例えると、まず、必ずしも必要でない出費を見直すことで支出を抑え、次に妻の労働時間を少し増やし、最後に夫が少し高い給与を求めて転職するということだ。年金はこの3つをうまく調整していくことで維持できる。

 もう1つの提案は、このコラムでも何度か触れてきた「定年の廃止」である。

 皆年金が完成した1961年は11人の若者で1人の高齢者を支えていた時代だ。「胴上げ」をイメージするとわかりやすいかもしれない。

 それが少子高齢化によって支え手が減り、胴上げが「騎馬戦」になっている。支え手はさらに減り続けるので「肩車」に向かおうとしている。

 そのような中で、定年の廃止は、有効な解決策になると僕は考える。高齢者であっても、健康で働く意欲がある人は年齢に関係なく支え手になってもらう。支え手が増えれば当然ながら年金や医療の財政は安定する。

 効果はそれだけではない。日本の大きな課題の1つとなっている「介護」についても、定年の廃止は大きく寄与する。「働き続けることは健康寿命を延伸させる」と医師たちが口をそろえて言っているからだ。つまり、社会の介護負担が軽減されるのだ。

 市民一人ひとりが年金の仕組みをきちんと理解し、解決に向けておのおのが考え、声を上げていくこと。それこそが重要なことだと僕は考える。

[日経産業新聞2017年8月3日付]


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