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春秋

2017/7/31 2:30
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 朝起きたら、日本橋の上に高速道路が架かっていた。東京の老舗が集まる東都のれん会のホームページで、栄太楼総本舗の細田安兵衛さんが前回の五輪前夜の思い出を語っている(「大旦那のちょっといい話」)。びっくりしたよ。なんだこりゃ。ひどいねえって……。

▼そのころ、首都高は急ピッチで建設が進んでいた。用地買収の面倒が省けるからと、日本橋川の上を高架が這(は)い、ある日、ルネサンス様式の石造りの橋をもその下に閉じ込めてしまったのだ。1963年12月のことである。五輪の開幕まで1年を切り、競技場も新幹線もモノレールも突貫工事に次ぐ突貫工事の日々だった。

▼顧みれば、つくづく悔いが募る。だから高速を地下化し、景観を取り戻す構想がたびたび浮上してきたが日の目を見ぬままだった。しかしこんどは本当かもしれない。国土交通省や都などが、2020年五輪後の地下化着手をめざして動き出すそうだ。実現すれば、効率よりも歴史や文化を重んじた画期的な試みとなろう。

▼もっとも、歴史や文化がないがしろにされてきたのは日本橋だけではない。東京ではいままた、あちこちで突貫工事が進行中だ。日本橋再生は意味深いが、その価値観を広げていかないなら値打ちは半減しよう。細田さんの述懐によれば「かっこいいぞ。未来都市だな」とはやしているうちに、橋は高架下に隠れたそうだ。

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