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途上国への省エネ型水処理輸出 国内施設更新の契機に
編集委員 久保田啓介

2017/7/13付
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 ベトナムやフィリピンなどの途上国が、日本企業が開発した省エネ型の水処理技術を積極的に導入している。下水道整備がこれから本格化する途上国は最新技術への関心も強く、日本政府もインフラ輸出拡大の一環として後押ししている。一方、日本は「水処理の先進国」と言われてきたが、施設の老朽化が目立ってきた。新技術の海外展開を機に国内施設の更新も真剣に考えるときだ。

新技術は沈殿槽を使わず、電力消費量を半減できる(高知市下知水再生センターの実証設備、メタウォーター提供)
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新技術は沈殿槽を使わず、電力消費量を半減できる(高知市下知水再生センターの実証設備、メタウォーター提供)

 ベトナム中部の港町ホイアン市。17~18世紀の古い建物が残り、ユネスコの世界文化遺産にも登録された地区の近くで、最先端技術を使った下水処理場の建設が進んでいる。市当局が日本の政府開発援助(ODA)を受けて計画。メタウォーター月島機械が受注し、今年3月に着工した。

 同市は観光名所の旧市街に生活排水が流れ込み、環境悪化に悩んでいた。処理場が完成すれば1日当たり2千立方メートルの下水を処理でき、観光資源の保全に役立つと期待されている。

 ここで採用されたのが、メタウォーターが開発した「前ろ過散水ろ床法」と呼ばれる新技術だ。

 通常の下水処理施設では汚水を沈殿槽にためて空気を送り、微生物を活性化して汚物を分解する。だが送風機で空気を送るのに大量の電気を使う。日本の水処理施設全体の消費電力は国内の総電力需要の0.7%に相当し、温暖化ガスの排出量も0.5%を占めることが問題になってきた。

 一方、前ろ過方式は沈殿槽を使わず、汚水を最初にろ過槽に通して汚物をこしとる。ろ過槽には一辺数ミリメートルの樹脂製のろ材を浮かべ、汚泥などをくっつける。

 ろ過した汚水は水槽の上部からシャワーのように散水し、その勢いで酸素を取り込んで微生物を活性化させる。送風機で空気を送る必要がなく、消費電力をほぼ半減できるという。

 国土交通省の「下水道革新的技術実証事業(B―DASH)」の対象になり、国の補助金を受けて実用化。2014年度には高知市の下水処理場で実証試験し、性能を確かめた。

 経済成長で工場・生活排水が増え、下水道整備を急ぐアジアの途上国は、同時に電力不足にも直面している。メタウォーターは「省電力性を兼ね備えた新技術はベトナム以外の国でも潜在需要が大きい」(寒川博之海外営業部マネージャー)とみて、途上国市場の開拓に力を入れる考えだ。

 日本政府もインフラ輸出拡大に向け、ビジネス環境づくりを後押ししている。政府間協議で日本の技術をPRしたり、関連企業のほか下水道の運営ノウハウをもつ自治体が集まる「下水道グローバルセンター」を通じて途上国との協力を強めたりしてきた。

 これらの活動でフィリピンやインドネシア、スリランカなどでも日本企業が水処理関連事業を相次ぎ受注。官民連携が功を奏しつつあるようだ。

 一方、新技術を足元の国内で普及させるには課題が多い。

 国内に下水処理施設は約2000カ所あるが、多くは高度経済成長期に建てられ老朽化が進んでいる。11年の東日本大震災では宮城、岩手両県の沿岸部の処理場が津波で被災し、機能を停止。耐震性の強化や河川の中流域への処理場の再配置が課題として浮上した。

 しかし、多くの自治体が財源難に直面し、老朽化した処理場の更新はなかなか進まない。「東日本大震災から6年たち、国内の水処理を根本から見直そうという機運の低下も心配」(京都大学の田中宏明教授)との声もあがる。途上国への輸出が軌道に乗り始めたのを機に、省電力や防災を考慮した水処理のあり方を官民で議論すべきときだ。

[日経産業新聞2017年7月13日付]


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