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春秋

2017/7/11 2:30
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 福岡県朝倉市の杷木(はき)地区を取材で訪ねたのは昨年春だった。通称「朝倉街道」と呼ばれる国道を1時間ほどバスに揺られた。車窓からは有名な三連の水車も眺められる。「筑紫次郎」こと筑後川が街道に近づいたり、遠ざかったりと、のどかな山里の旅の思い出である。

▼その地区が記録的な豪雨によって一変した姿を紙面や映像で見る。濁流が家々や山の樹木を押し流し、大勢の命を奪い去った。牙をむいた自然の恐ろしさに、改めて震え上がる。あのとき赴いた神社や寺はどうなっただろう。広々とした果樹の畑に被害は出てはいないか。一刻も早い復旧や生活の立て直しを祈るしかない。

▼それにしても、なぜこれだけ降ったのか。梅雨前線に向かって、暖かく湿った気流が集まった。さらに山の斜面の影響も加わり、雨雲が同じ場所に次々生まれる状態が長い時間続いたのだという。山がちな列島である。同じような大気の条件はどこでも生じるし、大きな災害の引き金にもなりうる。肝に銘じねばなるまい。

▼朝倉街道沿いにはクスノキの大木が多いことでも知られる。数百年から千年以上の樹齢だ。今回の豪雨で大きな被害を受けた木もあるのだろうが、ほぼ無傷のものもあると聞いた。堂々とした幹回りに、天を隠すような緑の茂り。威容が発するパワーの後押しで、猛暑の中での地域の再建が始まる。少しでも助力をしたい。

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