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CO2削減、複数国で連携構想 アジア型に期待高まる
三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷尚

2017/7/6付
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 6月初、米国が地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱を表明したが、中国、欧州連合(EU)、日本などはパリ協定の実施を確認しており、懸念された離脱の連鎖は起きていない。不透明さはないとは言えないが、パリ協定実施に向けた準備が本格化する。

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 パリ協定の全29条の中で注目したいのは、排出量削減効果を国際間で融通し削減目標達成に使う仕組みを規定する第6条だ。クリーン開発メカニズム(CDM)など国連が集中管理する排出量取引だけの京都議定書と異なり、日本が進める「2国間クレジット制度」(JCM)など各国独自の排出量取引も可能だ。カギとなるのは削減効果を「輸出」した国と「輸入」した国の両方で削減目標達成に使う二重使用の回避であり、削減目標の意味を実質的に決めるとも言える。

 5月にボンで開かれた初会合では、各国の意見の相違から内容までの議論はなかったようだ。その直後、バルセロナに民間の専門家が多数集まったが、計画通りに2018年の気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)で決めるのは難しいとの見方が支配的だった。

 そこで注目されたのが、複数の国が協力して実績を積み重ねる「カーボンクラブ」や「カーボンハブ」と呼ばれる構想だ。貿易に例えれば、世界貿易機関(WTO)による世界全体の統一的な仕組みは理想だが産業構造などが異なる国間の合意は大変なので、2国間協定や環太平洋経済連携協定(TPP)のような経済連携協定を結ぶのと似ている。

 ポイントは2つ。異なる制度間での排出量取引のルールや電子取引などのインフラ整備と、各国の政策を調和し長期的な視点で排出量取引市場の統合を目指す政策協調だ。市場が相互乗り入れすることで流動性を増やし、コストの引き下げや価格の安定を狙う。同じコストでより多くの削減が実現できるともいえる。

 また、企業は国境を越えて二酸化炭素(CO2)排出コストを最小化することができ、また、事実上の標準として国際ルール化が進めば、制度リスクを減らす効果もある。国際展開する企業には選択肢が増える。

 韓国やオーストラリアなどは削減目標達成のためにクレジット(排出枠)を使う独自制度を作ることを検討しており、国際民間航空機関(ICAO)は具体的な作業に入っている。また国内での排出量取引を始めようと注力する中国もCDMをベースにした独自制度を「一帯一路」の協力国やアジアインフラ投資銀行(AIIB)を通じて活用するのでは、との噂もある。米カリフォルニア州はカナダのケベック州などと市場統合を進め、メキシコなどと協力する。

 さまざまな国で独自の制度が進むが、クラブ構想の中心は排出量取引の先進地域である欧州ではなくアジア、太平洋だ。その中で期待されているのが、インドネシア、ベトナム、タイ、フィリピン、メキシコなど17カ国と協力する日本のJCMだ。

 エネルギーと表裏一体のCO2は経済関係が密接なアジア・太平洋諸国とは貿易投資を通じて既に大規模に取引されているとも言える。CO2排出にコストが課されるのは避けがたい流れだ。CO2コストを原材料と同じく取引することでコストを抑え競争力確保が期待できる。クラブ構想をアジアとの経済連携のメニューの1つとして考えたらどうだろうか。

[日経産業新聞2017年7月6日付]


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