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大企業のイノベーションを成功に導く4つのポイント
伊佐山 元(WiL共同創業者兼最高経営責任者)

2017/7/4付
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 今、シリコンバレーは夏休みの真っ最中だ。この時期はスタンフォード大学をはじめとする大学の卒業式が開かれ、多くの著名人が卒業生に発破をかけるようなスピーチをした。

いさやま・げん 1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

いさやま・げん 1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

 「大きなリスクを取るために、これまで学んで来たのだ」「自らのこれからの活動に社会的な意義を考えよう」

 スピーチに表れる若者への期待は高い。相変わらずベンチャー志向が強い地域だ。一方、日本の若者は、最近の就職人気企業ランキングを見ても、大企業志向が根強く残っている。

 リスクを取れる優秀な人材には、ベンチャー企業を創業したり、参加したりして、社会を変えるような挑戦をしてほしい。だが、そう簡単に人間の性格が変わるわけではない。日本が置かれている環境を考えると、ベンチャーへの参加を促すとともに、大企業によるイノベーションも強化することは自然な流れといえよう。

 私は多くの日本の大企業とオープンイノベーションの活動をしてきた。その活動を通じて、大組織でのイノベーションの取り組みを効果的にするには、大切なポイントが4つあると考えている。

 まず、社長や最高経営責任者(CEO)などの経営トップがオーナーシップと責任を持って取り組まなければ、効果がないということだ。

 往々にして過去のイノベーションは、研究開発や企画など、ある特定の部署の中だけで取り組まれてきた。そのため、経営全体の問題意識に昇華されていない。多少の失敗があっても、社長がそれを笑い飛ばして、将来への投資を続けなければ、その組織に明日はない。

 2つ目のポイントは「キャッチャー」の存在だ。イノベーションが知と知の組み合わせの妙だとすれば、新しい知を探索して経営陣に投げ込む(提案する)「ピッチャー」が必要だ。だが、ピッチャーが投げてきたボール(新しい知)を受け止める老練なキャッチャーが社内にいないと、イノベーションは実現しない。

 多くの大企業は元気な若手社員をシリコンバレーに派遣したり、ベンチャー企業と交流させたりする。そうした活動を通じて得た知やアイデアを経営陣に提案するのだが、提案しただけで終わってしまいがちだ。若手が提案してきた内容を誰もがわかるようにかみ砕き、その実現に向けて社内調整をする――。キャッチャーのこうした役割は、大企業でのイノベーションには欠かせない。

 3つめのポイントは「出島」だ。イノベーションを目指す取り組みには、試行錯誤やそれに伴う失敗がつきものだ。この取り組みを続けるには、社内の評判や減点主義型の人事考課制度とは無縁の環境が不可欠だ。これが出島だ。

 出島は本社の遠くに設置するのが望ましい。異能の人材が自由に出入りし、新しい課題に挑戦する環境を用意するには、本社との関係を物理的にも遠ざけた方がよいからだ。保守的になりがちな本社とは別の環境を感じることで、人は創造性を発揮し、リスクの高いことにも挑戦できる。そのような出島をシリコンバレーのようなリスクに寛容な街につくってもよい。

 最後にもうひとつ。未来永劫続くビジネスはないということをすべての社員が理解することだ。「変化しなければ生き残れない」という健全な危機意識を持てるようになれるかだ。昔からシリコンバレーでも言われている。「(理由もなく何かをひどく恐れる)パラノイアだけが生き残れる」と。

[日経産業新聞2017年7月4日付]


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