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春秋

2017/7/3 2:30
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 「築地はほんとうにすばらしい所です。私には忘れられない、まったく夢のような日本の思い出です。……私にとっては、世界の博物館のすべてに匹敵しますね」。2009年に100歳で亡くなった文化人類学の巨星、クロード・レヴィ=ストロースが残した言葉だ。

▼名著「悲しき熱帯」で、ブラジルやインドの青空市を踏査した知の巨人は晩年、水産国日本の活気ある魚市場に魅せられる。訪日時に石川県輪島市の朝市などを視察。日本の学生に、築地市場の研究論文を書くよう勧めた。その助言を実践したのは、米ハーバード大学ライシャワー日本研究所のテオドル・ベスター所長だ。

▼流通大手による産直取引や、ネット通販が勢いを増している。仲卸によるセリが続く築地市場は時代遅れだとの指摘もある。が、ベスターさんの著書「築地」は、仲卸の「目利きの力」が、食の安全やブランドの創造に寄与すると説く。築地という場所自体が、江戸と東京の400年の時空をつなぐ生きた文化財だという。

▼東京都の小池百合子知事は「豊洲へ市場を移し築地を再開発」するという。その是非を議論する都議会の勢力図が決した。革新すべき市場の機能は何か。また、守るべき市場の価値とは何か。本質に迫った論戦も望みたい。レヴィ=ストロースが語った築地市場のすばらしさの意味を私たちはまだ知らないのかもしれない。

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