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あえてスマホ連携せず、ソニーのデジタル玩具「toio」
山田 剛良(日経テクノロジーオンライン副編集長)

2017/6/26付
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 ソニーが6月1日に発表した「toio(トイオ)」。通信機能を持ち、お互いの位置を認識できるマッチ箱大の小さな2つのロボットがキビキビ動いて作り出す「多彩な動き」を楽しむ新しいデジタルおもちゃだ。発売は12月になる。

toioは輪っかのコントローラーやキューブ型のロボットで構成される
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toioは輪っかのコントローラーやキューブ型のロボットで構成される

 2台の連動でシャクトリ虫のように動く。お互い勝手に動いて、ぶつかったら飛び跳ねて離れる。片方を手に持って鬼ごっこ。それぞれをリモコンで操縦したバトル――。別売りの「タイトル」を入れ替えて遊べる。

 ユニークなおもちゃを見ていて、気になる点があった。このおもちゃを使うと想定されるのは、スマートフォンやタブレットでウェブに触れる「ネットネーティブ」世代。ネットにつなぐおもちゃにしなかったのか。

 「デジタルに『手で触れて遊ぶ』にこだわった」と教えてくれたのは、toioの開発を主導した同社新規事業創出部TA事業準備室の田中章愛統括課長だ。田中氏は社内の新規事業創出プログラム「シード・アクセラレーション・プログラム(SAP)」に応募し、審査で優勝して開発。今回の発表にこぎ着けた。

 toioのアイデアが生まれたのは5年ほど前。ロボットの技術者だった田中氏がソニーコンピュータサイエンス研究所のアンドレ・アレクシー氏の研究案件を手伝ったことがきっかけだ。プログラムで制御された小さなロボットで遊ぶ基本アイデアで盛り上がった。だが当時は「センシングや無線、モーターなどすべての技術が足りなかった」(田中氏)。

 2人にソフト開発者の中山哲法氏を加えた3人で検討して技術的な課題を解決。ビジネスモデルを練ったうえでSAPに応募した。

 タブレットやネットをあえて使わない、教育じゃなくておもちゃといったコンセプトはその過程で固めた。「子供たちがすぐに遊び始められるようにしたかった。タブレットは操作自体が難しいし、コストも跳ね上がる」(田中氏)

 プログラミングの要素もあえて自分たちでは入れなかった。「最初からプログラミング環境を触らせると複雑になりすぎる」(田中氏)。toioが広まったあとに、タイトルの1つとして出ればよいと割り切った。

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から現職。京都府出身、50歳

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から現職。京都府出身、50歳

 toioを実際に見て「さすがソニー」と驚くのはハードウエアの完成度の高さだ。まだ試作品なのに小さくて高精度でキビキビ動く。「様々な部門の技術者から有益なアドバイスをもらえた」と田中氏は振り返る。「(SAPは)社長直轄のプロジェクトなので話も通りやすかった」

 実は田中氏はSAPの制度自体を作った一人でもある。SAPの準備段階から参画し、社内の優れたアイデアをスピード感を持って製品化する仕組みを考え、実装してきた。自ら作った仕組みを、自らのアイデアの実現にも使ったわけだ。

 もちろん関係者だからといって審査が甘かったわけではない。今のSAPは応募者も増えており競争率は高い。「やるからには絶対に優勝するつもりで徹底的に準備してオーディションに臨んだ」(田中氏)という。

 田中氏にはソニーの技術者、SAPの企画者に加えて実はもう一つの顔がある。個人の立場で広くハードウエア技術者が交流するコミュニティー「品モノラボ」の発起人である。SAPの準備と並行して2013年3月にスタートした品モノラボは「メーカーズ」ブームや技術者コミュニティーの先駆けとなった。

 自社技術にこだわらず、他社や大学、異業種などから幅広く技術とアイデアを募って製品開発を進める「オープンイノベーション」の活用が叫ばれている。その申し子のような技術者が作ったのがtoioとも言える。ネットネーティブに技術者の思いは届くか。今後の展開に期待したい。

[日経MJ2017年6月26日付]


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