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春秋

2017/6/20 2:30
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 イソップ物語には、よくアリが出てくる。その日暮らしのキリギリスを尻目にせっせと食糧を蓄え、冬に備える寓話(ぐうわ)はご存じのとおり。動けぬサナギをからかっていたアリが、羽化して舞う元サナギの姿を見て仰天という話もある。こちらはちょっと間抜けな手合いだ。

▼格好いいのはハトへの恩返しである。川に滑り落ち、ハトが投げてくれた小枝にはい上がって命拾いしたアリ。そのハトが男に殺されそうになったとき、アリは男の足をかんで恩義に報いるのだ。寓話集の成立は紀元前3世紀ごろ。その後も増補や改変を重ねている。いつもこの昆虫は、憎めない存在として語られてきた。

▼南米原産で強い毒を持つヒアリがはびこっていたら、物語もずいぶん違っていただろう。ファイア・アントの名のとおり、刺されるとやけどのように痛み、呼吸困難に陥ることもあるという。かくも凶暴な種が近年は中国南部、台湾などにも侵入し、先日はついに神戸港で見つかった。貨物船に潜んでいて上陸したらしい。

▼市街地から遠く、巣ができている様子もないというが心配は募る。国立環境研究所はかねて「侵入・定着すれば甚大な被害をもたらす」と警告していた。とはいえ大半の人は初耳だろうから、まずは正確な知識を得たいものだ。イソップの昔は考えられなかった物流網に、厄介な客もまた便乗する危険を知らねばなるまい。

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