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春秋

2017/6/15 2:30
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 アルゼンチン生まれの世界的な指揮者ダニエル・バレンボイム氏は11日、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸でタクトを振った。1967年6月の第3次中東戦争、いわゆる6日間戦争でイスラエルが支配下におさめ、以来ユダヤ人による入植を進めてきた土地である。

▼イスラエル軍の空爆で幕を開けた戦闘そのものは、あっけないほど短時間で幕を閉じた。イスラエルが完勝したことは、その後の中東、ひいては世界の歩みに、はかりしれない影響をおよぼしてきた。あれからちょうど半世紀。「あの戦争を忘れない」。そんな思いを込めたコンサートなのだと、本人は語ったそうである。

▼もともとバレンボイム氏はユダヤ人である。1952年にはイスラエル国籍を取得した。けれど、ヨルダン川西岸やガザなどをイスラエルが占領し続けていることには厳しい批判を浴びせてきた。パレスチナとの平和共存こそはイスラエルにとって最良の安全保障になる。そうした信念が、政治的な発言からはうかがえる。

▼「アラブの春」や過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭などの陰に隠れ、近年パレスチナ問題は以前ほど話題にならないが、中東の混迷のいわば通奏低音として鳴り続けている。バレンボイム氏にはイスラエル国内からもイスラム世界からも非難の声が届く。勇気ある発言をくり返す姿は、巨匠の呼び声にふさわしい。

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