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春秋

2017/6/13 2:30
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 「もし、天が落ちてきたら」。古代中国、杞(き)の国に心配で夜も眠れぬ者がいた。この故事から無用の心配を「杞憂」という。しかし、この者があの映像を目にしたら「やはり天は落ちるかもしれない」と思うのではないか。愛知県の東名高速で信じられない事故である。

▼行楽地へ走るバスのフロントガラスに向かって、怪物にでも放られたごとく反対車線から車が飛んできた。日々の暮らしの基盤となっている常識というのか、信頼を根っこから覆される怖さがある。ベテランのバス運転手はとっさにハンドルを少し左に切った。乗客の被害を最小限にとどめようとする本能的な反応だろう。

▼さらに乗務員が事故前、乗客にシートベルト着用を訴え、点検していたと伝えられている。「想定外」に備える目配りである。貸し切りバスなどでは、運転手が乗客にベルトを着用させるよう義務付けられている。しかし「窮屈」と従わない人が多い。着用率4割の数字が実態を語る。我が身を振り返っても猛省しかない。

▼11年前、福岡で酔った若者の車に追突され、幼いきょうだい3人が溺死した悲劇があった。これを機に飲酒運転撲滅へと願いが渦巻いた。今回もベルト着用の徹底へと結実してほしい。時速100キロで車が行き交う世界では、少しのミスや油断が大きな災いを呼ぶ。半ば杞の国の人の気持ちで、注意を払うのがよさそうだ。

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