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米離脱後のパリ協定、中国の排出量取引が焦点
三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷尚

2017/6/8付
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 トランプ米大統領は「パリ協定」からの離脱を発表した。予想されたとはいえ衝撃は大きく、各国や産業界から批判が相次いだ。パリ協定は途上国も削減目標を持ったことが特徴であり、それを可能にしたのは米国と中国の協力だった。途上国や中国にしてみれば、はしごを外された格好だ。中国の対応次第では途上国の大量離脱となり、パリ協定の崩壊につながりかねない。

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 中国は排出量を2030年までに減少に転じさせると約束した。見方を変えれば30年ごろまで増加が続く。トランプ大統領も指摘した点だ。

 しかし、経済成長も長期的に7%を超える水準から3~4%台へと低下すると見込まれ、国際エネルギー機関(IEA)は二酸化炭素(CO2)規制を適切に行えば、20年代前半に排出量が無理なく減少に転じ、30年ごろには10年代前半の水準に戻すことも可能との分析を公表している。

 このシナリオのカギを握るのが排出量取引だ。中国は国連が管理するクリーン開発メカニズム(CDM)では世界最大の排出枠(クレジット)供給国で、13年から北京市などで排出量取引(ETS)を導入。第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)では、17年から全国規模に拡大すると明言した。

 5月に電力、セメント、アルミの先行3部門の排出枠割り当ての基準値が公表されたが、地域による技術の相違を考慮はするものの、高効率化を前提にした統一基準だ。国内航空、製鉄など5部門も来年以降追加される。

 排出量取引は排出枠を企業間で取引することで適切な価格を導き出し、削減コストを抑える仕組みだ。1トン当たり30元(約480円)という政策誘導価格も非公式に示されている。上海市など7つの取引所が排出量取引に名乗りを上げている。

 また、中国版CDMにより小規模工場の省エネなども取引に参加できる。動き出せば、欧州排出量取引市場を上回る世界最大の排出量取引市場になるだろう。

 懸念もないわけではない。排出枠の割り当てが公平かどうか、あるいは投機的な動きがないかどうか。分配が甘ければ削減が進まない。数値基準を採用し、価格の高騰や低迷を抑える介入基金の設置や炭素税との併用など、欧州や北米の排出量取引の経験を活用した工夫も検討している。

 成熟した中国経済が次の段階の経済成長を目指すためには、エネルギー供給や資源多消費産業の構造転換は避けられない。排出総量をコントロールする排出量取引は構造転換を確実にする。排出量の早期減少は現実的なシナリオだ。

 パリ協定による20年削減目標の見直しで、「削減目標引き上げ」という切り札を持つ中国がパリ協定を離脱する積極的な理由は見当たらない。

 パリ協定の将来は不確実との指摘もあるようだ。しかし、低炭素社会への移行は多少の揺り戻しがあっても変わらない流れだ。

 トランプ大統領は素材産業の生産減とマイナス要素だけに触れたが、他方で新しい技術や産業による雇用や収入増もある。CO2規制を商機と捉え、本格的に長期戦略を考えてはどうだろうか。不透明さがある今の対応が将来を分けるかもしれない。

[日経産業新聞2017年6月8日付]


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