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20年に船舶燃料油の硫黄分規制 LNG船に商機
日本総合研究所理事 足達英一郎

2017/6/1付
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 船舶の燃料油に含まれる硫黄分濃度規制が強化される。2020年からは、一般海域における燃料油の硫黄分の規制値(現行3.5%以下)が0.5%以下となる。全ての船舶がこの規制に適合する燃料油を使用するか、排ガス洗浄装置を使用するか、あるいは液化天然ガス(LNG)等の代替燃料を使用するかの対策を講じなければならない。海運業界にはコスト負担が重くのしかかる。

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 昨年10月、国際海事機関(IMO)第70回海洋環境保護委員会が20年からの強化を決定した。

 硫黄分の含有量が低い低硫黄C重油や軽油は、明らかに従来の高硫黄C重油より割高だ。

 IMOの専門家部会の事前の予測では、価格は現在の1.4倍程度に上昇するとみられる。

 排ガス洗浄装置を設置すれば、安価な高硫黄C重油の使用を継続できる。大型ばら積み貨物船では、設備投資には10億円オーダーの資金が必要になるという。「3年以内に投資回収が可能」という試算もあるが、機器自体が大きく、重量も重く、付帯的な設備も必要になる点がネックだ。

 加えて、これらの対策の弱点は、将来強化される可能性がある、船舶から排出される二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスの削減規制と整合性がないことにある。硫黄分対策を実施したとしても、重油を燃焼させることで発生するCO2は大きく変化しないからだ。

 そこで、長期的展望のもとでクローズアップされるのが、LNG等の代替燃料を使用する船舶の導入という対策だ。

 業界関係者によると、16年11月時点で、就航中のLNG燃料船が88隻、発注済みの新造船が98隻、将来の使用を見越してLNG燃料システムの設計及び部分的な設備搭載などを計画している船舶が合わせて70隻あるという。これが3年後の20年までには、世界で400~600隻が就航するとみられる。

 「従来の2倍から3倍の大きさの燃料タンクや再液化装置などエンジン以外の設備投資が必要」「新造時の価格は、15~50%増」とはいうものの、「環境性の高い低硫黄重油に比べてLNGの方が10~20%は調達コストが安い」「硫黄分はゼロ、CO2排出量は約25%削減、窒素酸化物の排出も圧倒的に抑えられる」というのが魅力である。

 LNG燃料船就航で、先行しているのは欧州である。これには、北海・バルト海において厳しい硫黄分濃度規制を率先して受け入れた背景がある。最近では、これまでの投資が、負担から先行者利益に大きく変わろうとしている。陸地におけるLNG燃料供給インフラ整備の実績も地域の競争力に結び付きつつある。不可逆な環境制約が見込まれる場合には、規制を早期に許容することが、将来のコスト回避を実現することになるという典型例だ。

日本郵船が建造したLNG燃料のタグボート
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日本郵船が建造したLNG燃料のタグボート

 わが国でも、過去にLNG燃料船の導入機運が高まったり、意欲的な建造需要予測が公表されたりしたことがあった。しかし、短期的な採算性の判断から、なかなか実現に至らなかった。

 また、LNG燃料船導入に必要な、ガス会社、造船会社、船舶用エンジンメーカー、港湾当局、安全規制当局など、幅広い官民の合意形成が一気には進まなかった。こうした「変化を肯定する姿勢」の共有は、日本が常に苦手としてきた事項でもあった。

 それでも、ここに来て大手海運会社が代替燃料について口にし始めた。ガス会社や商社も商機とみて動き出しており、政府も横浜港をモデルケースとして船舶へのLNG燃料供給拠点の整備に一歩を踏み出した。

 日本が世界をリードする余地は、まだ十分残されている。

[日経産業新聞2017年6月1日付]

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