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ARで歯科医教育、血管や神経の位置が「丸見え」
山田 剛良(日経テクノロジーオンライン副編集長)

2017/5/29付
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 コンピュータグラフィックス(CG)と現実の映像を組み合わせて利用する技術の実用化が近づいてきた。AR(拡張現実)やMR(複合現実)と呼ばれる。3月には歯科医療機器大手のモリタ(大阪府吹田市)がソフトバンクグループと組んでAR歯科治療支援システムを開発した。開発には2人の歯科医が深く関わっている。

まずは教育用での活用を見込んでいく
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まずは教育用での活用を見込んでいく

 「デジタルデータがその場にあるのに、歯科医の仕事に十分役立っていない。その状況をなんとかしたい」と話すのは、クボタ歯科(京都市)の窪田努氏だ。窪田氏は同じく歯科医の芳本岳氏(くわばら歯科医院、京都府八幡市)とともに、今回のAR歯科治療支援システムの開発を主導した。

 今回のシステムは歯科医がステレオカメラを搭載したヘッドマウントディスプレー(HMD)を装着。カメラで撮影した目の前の患者のリアルタイム映像に、X線CTスキャン(断層撮影)などから得た神経や血管のCG画像などを重ね合わせて表示する仕組みだ。

 本来は目に見えない患者の血管や神経の位置を確認しながら、治療できるため、精度が高く安全な治療ができる。例えば人工の歯を埋め込むインプラント治療では、従来の3~4倍正確な「1ミリ以内の精度が可能になる」(芳本氏)という。

 今回のシステムを開発したのはソフトバンク傘下のリアライズ・モバイル・コミュニケーションズ(東京・港)だが、芳本氏が個人的に開発していたプロトタイプをもとにしている。知人を介して芳本氏と知り合った窪田氏がプロトタイプを見てモリタに呼びかけ、開発にこぎ着けた。

 「プロトタイプは精度も悪く、動作も鈍かった。ただ見た瞬間、これだと思った」と窪田氏は振り返る。窪田氏はもともと、歯科医師向けにパソコン活用セミナーを開くなど、歯科医の業務でのデジタル活用を推進していた。デジタル化の「次の一手」を探していた。

 実は歯科の世界では急速にデジタル化が進んでいる。例えば口の中の歯並びの模型の製作にCADを使ったり、義歯や歯にかぶせるクラウンなどの作製に3Dプリンターを使うのは日本でも当たり前になりつつある。

 ところが、こうした際のデータは治療にはあまり活用されていないのが現状だ。CTスキャンの3DCG画像をパソコンに表示して治療方針などを検討することはできるが、実際の治療時には、その画像と目の前の患者の歯の様子を見比べ、頭の中で重ね合わせて見当をつけるしかない。

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から現職。京都府出身、50歳

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から現職。京都府出身、50歳

 芳本氏にも同じ問題意識があった。芳本氏はCAS(コンピューター支援手術)と呼ばれる手法を得意としている。あらかじめCADで設計した口腔(こうくう)内の模型をもとに、3Dプリンターで作ったガイドを使って手術の精度を高める手法だ。

 芳本氏はある日、VRゲームなどに使うパソコン用のHMDを使い、現実の画像とCGを組み合わせて、もっと手軽に3D画像を治療に活用するというアイデアを思いつく。ネットを通じてこの構想に興味を持つプログラマーを探して個人的に依頼。今回の原型になるシステムの試作を始めた。

 今回ソフトバンクグループの力を借りて実用レベルに近づけたとはいえ、法制度の規定を考えると、現状のシステムを実際の歯科治療の現場に持ち込むのはまだ時間がかかる。「さまざまな課題があり、壁を越えるのは容易ではない」(芳本氏)という。

 そこでまずは歯科医の教育の現場での実用化を目指す。例えばクラウンを取り付ける歯を削る練習をする際に、理想の形状をARで見せるといった活用法が考えられる。「歯科医が効率的に手技を習得できるようになる」(窪田氏)。教育現場で実績を積み、臨床医療への道を模索する考えだ。

 4月に開催された記者会見でモリタの森田晴夫社長は「2年以内にモノに(商品化)したい」と意気込みを示した。その時には窪田氏と芳本氏の夢が一歩前に進むことになる。

[日経MJ2017年5月29日付]


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