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親北路線で韓国は乗り切れるのか

2017/5/10 2:30
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 朴槿恵(パク・クネ)前大統領の罷免に伴う韓国大統領選挙で、革新系の最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表が当選を確実にした。

 文氏は貧しい家庭に生まれ、学生時代に軍事政権に抵抗する民主化運動に身を投じた。同じ人権派弁護士出身の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下で秘書室長などを務めた。保守系の前大統領の醜聞を追い風に、庶民的で実直な人柄も有権者の支持を集めたようだ。

 韓国ではその盧政権以来、約9年ぶりの革新政権の誕生となる。

日米との連携欠かせず

 師と仰ぐ故盧元大統領の志を継ぎ、2代続いた保守政権からの政策転換をめざすとみられるが、難題は山積する。直ちに大統領就任後、まずは組閣を含めた新政権の体制を早急に整える必要がある。

 国民の多くは前大統領の醜聞をきっかけに、政治不信、政財界の癒着、貧富の格差など、閉塞感が漂う社会の現実に強い不満を抱いている。新体制を固めても、これを解消するのは容易ではない。

 ただでさえ韓国は近年、経済成長率が2%台と低迷し、若年層の失業率は直近で10%台に達している。財閥など大企業と中小企業の賃金格差も大きい。

 文氏は例えば公共部門の雇用を創出するとともに、政界との癒着がとりざたされる財閥改革に本腰を入れるとしている。だが、政府の役割を重視し、韓国経済のけん引役である財閥に本格的にメスを入れれば、民間の経済活力をそぎかねない危うさも抱える。

 外交・安全保障政策、とりわけ核開発を続ける北朝鮮への対応には、懸念を拭えない。

 文氏は北朝鮮への制裁と圧力に終始した朴前大統領の路線を批判し、韓国が南北の対話や協力を通じて北朝鮮の核問題を主導的に解決する方策を提唱する。「核問題を解決できるならどこでも行く」と、訪米に先だって北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長と会談する構えすら示している。

 さらに朴政権が制裁措置として中断した南北共同事業の開城工業団地の操業再開や、南北の新経済ベルト構築にも意欲を示す。

 北朝鮮のミサイル開発をけん制するため、米韓が進めている米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備については「自らの政権で判断する」というのが、かねての持論だ。

 核やミサイルの挑発を繰り返す北朝鮮に対し、米トランプ政権は原子力空母「カール・ビンソン」を周辺海域に派遣するなど軍事的な圧力を強めた。北朝鮮の後ろ盾とされる中国も北朝鮮からの石炭輸入を停止したという。国際社会が結束して強力な包囲網を築こうとしているなか、文氏の唱える親北路線は明らかに逆行する。

 もちろん軍事的な衝突を避けるには、対話と圧力のバランスが欠かせない。トランプ大統領が米朝首脳会談の可能性に言及したのもその証左だろう。とはいえ北朝鮮に核開発を放棄させる道筋が全くみえないのに、韓国がむやみに融和政策に傾斜すれば、国際的な結束を大きく乱しかねない。

 まずは日米との連携を基軸に、中国やロシアなども含めて北朝鮮に強い制裁圧力をかけていくのが筋だろう。北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威と国際社会の懸念を共有し、くれぐれも冷静な言動を保つよう文氏には求めたい。

慰安婦合意の順守を

 文氏の当選で日韓関係の行方にも不透明感が漂う。北朝鮮の核問題を含めた協力には前向きだが、日韓の歴史問題について「原則的に対応する」と明言。とくに朴前大統領が進めた慰安婦問題をめぐる一昨年末の日韓合意は再交渉を求めると主張してきたからだ。

 日韓はこの合意で「最終的かつ不可逆的な解決」をうたっている。仮にほごにするようなら日韓の信頼関係は損なわれ、国際的な信用も失墜することを肝に銘じるべきだ。日韓合意を順守するとともに、ソウルの日本大使館前や釜山の日本総領事館前の少女像撤去に努力してもらいたい。

 日韓には竹島(韓国名は独島)の領有権問題がくすぶり、韓国では戦時中に日本企業に徴用された韓国人への損害賠償を求める訴訟も相次ぐ。韓国の市民団体は日本大使館前などに徴用工を象徴する像の設置も計画中だ。文氏が歴史問題で強硬な態度をとれば、日韓の関係修復はますます遠のく。

 朴前大統領は任期中、一度も日本を訪問しなかった。日本政府は文氏に早期訪日を招請するとともに、慰安婦合意の重要性と、未来に向けた関係づくりの大切さを粘り強く説いていくべきだ。

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