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生産性改革(中) ホワイトカラーの力を引き出そう

2017/5/6 2:30
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 日本の問題のひとつは製造部門の人たちを除いたホワイトカラーの生産性の低さだ。ものづくりは効率化が進むが、営業や間接部門などは1人の従業員が生む付加価値が低迷していると指摘される。

 米国の調査会社コンファレンス・ボードとコンサルティング会社マーサーは共同で、アジアの計11カ国について、1人あたりの生産性の伸び率を算出した。

大きい経営者の役割

 2008年から16年にかけて最も高いのはインドで6.47%、2位は中国の5.82%。日本は0.29%と、韓国(1.82%)やシンガポール(0.77%)も下回り最下位だった。ホワイトカラーの生産性の伸び悩みによるところが少なくない。

 現状を放置できない理由が2つある。第1は労働力不足が進むことだ。15年に7728万人の日本の生産年齢人口(15~64歳)は29年に7千万人、40年に6千万人を割る。成長には働き手一人ひとりの生産性向上が必須になる。

 第2は「第4次産業革命」の到来だ。人工知能(AI)やロボットに代替される仕事が増えるとみられており、雇用の安定のためには働く人が付加価値の高い仕事をしなくてはならない。

 ホワイトカラーが自らの生産性を高めやすい環境をつくる必要がある。経営者の役割は大きい。

 もうかる事業に経営資源を集中することが、社員がより多くの付加価値を創出する基礎になる。米ゼネラル・エレクトリック(GE)はデジタル技術を駆使してサービスで稼ぐ事業モデルに改革した。日本企業も技術革新に即応した戦略をもっと打ち出すべきだ。

 米コンサルティング会社のウイリス・タワーズワトソンが昨年、雇用されて働く世界の3万1千人に調査したところ、積極的で充実した精神状態にはないという人は日本では69%と、世界平均の46%を大幅に上回った。

 社員の「やる気」を引き出さなくては生産性は高まらない。権限委譲を進め、社員が成長する機会を増やすべきだ。アサヒビールや中外製薬は経営学修士(MBA)取得や語学留学などのための休職制度を設けている。

 海外企業は個人が価値創造をしやすい仕掛けづくりで先行する。米グーグルの各拠点には、働く時間の2割を好きな研究など担当業務以外の活動に充てられる「20%プログラム」という制度がある。無料のウェブメールサービス「Gメール」もここから生まれた。

 多様な人材が力を発揮しやすくする工夫があるのは保険大手の仏アクサグループだ。社員が相手の国籍や年齢などに対して無意識のうちに抱く偏見を取り除けるよう研修に力を入れている。

 成果主義が日本企業はまだ甘く、その徹底が生産性向上には欠かせない。カルビーでは社員が毎年度、具体的な数字をあげて会社との「コミットメント(約束)」を設定する。結果にこだわる姿勢を産業界全体に広げたい。

 大学も企業に勤める人を再教育する場として重要な役割を担う。だが大学入学者に占める25歳以上の比率(12年)をみると、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均が18.1%なのに対し、日本は1.9%にすぎない。

社会人教育を活発に

 関西大学は昨秋に開設した大阪市・梅田キャンパスで、大学院教育として、企業の人材を東南アジアなど海外子会社の経営幹部に養成する講座を設けている。大学は教育内容に知恵を絞ってほしい。

 政府には2つの点を強く求めたい。まず、労働時間でなく成果に賃金を払う「脱時間給」制度の創設と裁量労働制の拡大を盛り込んだ労働基準法改正案を、早く成立させることだ。ホワイトカラーの仕事は基本的に、成果が働いた時間に比例しない。柔軟に働ける労働時間制度は不可欠である。

 2点目は成長力の落ちた産業から伸びる分野へ、人材が移りやすくすることだ。付加価値を生みやすい仕事に、より多くの人材を振り向けたい。民間の職業紹介サービスを活発にするための規制改革が欠かせない。IT(情報技術)やロボット、医療関連など成長分野の仕事に就くための職業訓練の充実も急がなければならない。

 企業、大学、政府の3者が危機感を持って、ホワイトカラーが生産性を高めやすい環境整備へそれぞれの役割を果たすときだ。

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