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生産性改革(上) サービス業は「脱・安売り」を競え

2017/5/5 2:30
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 人口が減る中で経済を成長させるには一人ひとりが生み出す経済的な価値、すなわち「生産性」の向上が欠かせない。しかし2000年に世界2位だった日本人1人当たり国内総生産(GDP)は近年、20位台が続いている。主要国との差の9割がサービス業の生産性の低さによるものとされる。

ロボット技術で効率化

 サービス業は豊富な労働力を前提としてきたビジネスモデルを転換すべき時だ。かつて生産性向上は人員整理とセットで考えられがちだったが、人手不足の今なら労働組合の協力も得やすい。

 生産性を上げるといっても、ただ従業員を今以上に忙しく働かせるだけではサービスの低下を招きかねない。無駄な仕事を減らし、利益や付加価値を生む仕事に専念させることが大事になる。

 方法の一つは、製造業が経験してきたロボット技術などによる効率化だ。エイチ・アイ・エスは長崎県のホテルで受付や清掃にロボットを導入、30人の従業員を7人に減らした。浮いた人員は今後、国内外で多店舗展開にあたる。

 外食のリンガーハットはロボット調理器を導入、少人数で店を運営できるようにし出店拡大に生かす。すかいらーくは一部の店にセルフレジを、ホテルオークラは外貨の自動両替機をそれぞれ設置した。セブン&アイ・ホールディングスやイオンも食品加工機などの導入で省力化を進める。

 ただし、効率化だけが生産性の向上の方法ではない。これから挑むべきなのは、均質なサービスをいつでも安く提供するのではなく、質の高いサービスを提供し、それに見合った対価を得ることで、従業員1人あたりの利益や賃金を高める道ではないか。

 そのためにはまず、成功体験にとらわれず、利益を生まないサービスを見極め捨てる決断が要る。外食のロイヤルホストは24時間営業をやめ、昼・夕食の時間に重点的に人を配置して利益率を高めた。佐川急便も運賃の安いアマゾンジャパン(東京・目黒)との契約を打ち切り利益率を上げた。

 IT(情報技術)などで、個人が持つ顧客情報を共有することも付加価値の高いサービスにつながる。機器の低価格化で小さな企業でも導入しやすいのも利点だ。

 老舗旅館の陣屋(神奈川県秦野市)はタブレット端末で女将が蓄積した顧客情報を見られるようにし、きめ細かい接客に生かす。会計なども一元管理するソフトを独自開発した。ネッツトヨタ南国(高知市)も顧客情報の共有などで、値引きに頼らずにトヨタ車販売店で満足度上位となった。

 あえて人手や手間をかけ、高額サービスで新市場を開拓する手法もある。低価格コーヒー店で伸びたドトール・日レスホールディングスは新事業の高級喫茶「星乃珈琲店」が高齢者などに支持され、好決算を支える。両備ホールディングスは個室制の高級高速バスが女性客らで満席だ。

 ITと高級路線を組み合わせた例も多い。旅工房は要望に応じ宿などを手配する注文設計型の旅行をネットで販売、先月上場した。

人は高度な仕事に専念

 ハッピー(京都府宇治市)は高級衣料の洗浄や補修を全国からネットで受ける。いずれも販売にITを生かし、人は付加価値を生む企画や技術提供に専念した例だ。

 今後はITやロボットが人の仕事を肩代わりしていく。従業員には何らかの専門家としての能力を磨き、高度なサービスの担い手を目指してもらうべきだ。付加価値の低い仕事は安く外部に委託したり、取りやめたり、別料金を徴収したりすることを考えたい。

 スーパーのサミットや成城石井(横浜市)は案内役の店員を増やし、付加価値の高い商品の売り上げを伸ばす。金融、教育、保育、医療などの分野も省くべき業務は省き、IT化や機械化も進め、人は高度な仕事に専念させたい。

 政府や自治体は規制緩和で企業の生産性向上を応援したい。東京の隅田川沿いに先月、古いオフィスビルを改装したホテルが開業し外国人でにぎわう。東京都が河川敷の上部の使用を認めたため、新設したテラスでパーティーを開ける点が生きた。

 公道での自動運転も含め、土地利用などの規制緩和がサービスの効率化や商業施設の付加価値向上につながる例は多い。安全確保に配慮しつつ、協力を進めたい。

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