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北朝鮮問題で国家の「パワー」と国際情勢学ぶ
グロービス経営大学院学長 堀義人氏(63)

2017/4/21付
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 「今日の学びトークは~」。子供たちが囲む食卓で、期待感を高めるべく語尾を上げて間をおく。「北朝鮮問題です」と宣言すると、子供たちが「オー」と反応し、僕が語り始める。その夜も食卓でテーマを決めて話をする堀家恒例の「学びトーク」が始まった。

 「トランプ政権になって初めて米中首脳会談が行われた日に、トランプ大統領は習近平国家主席をフロリダの別荘でお迎えして、晩さん会を開いたんだよ。大統領の孫が中国の歌を披露するなど友好的なムードの中で会は進んだけど、デザートになった時に一変した。大統領は『アメリカ軍がシリアに巡航ミサイルで爆撃した』ことを習氏に伝えたからだよ。会談中に『中国が北朝鮮問題を解決しなければ、アメリカ独自で解決していくつもりだ』とも伝えていたんだよ。これはどういうメッセージだと思う」

 子供たちに一言ずつコメントをもらって、僕がまた語り始めた。

 「これは『アメリカが世界の秩序を維持する。世界のどこでも爆撃できる力を持っているし、武力行使も躊躇(ちゅうちょ)しない』という強烈なメッセージだと理解できる。大統領は会談後もツイッターで『中国が北朝鮮問題を解決しなければ、アメリカ独自で解決していくつもりだ』と投げかけていたんだよ。つまり、首脳会談の場でアメリカの力を誇示し、本気度を示すことが目的だったと思えるんだよね」

 ここで話をシリアに移してみた。国際情勢を理解するためにも「パワー」という概念を理解してほしいからだ。

 「中東情勢は、歴史や民族問題が絡んでいるんだよ。シリアには、ロシアやアメリカが軍事的に関与し、周囲ではトルコやイラン、サウジアラビアなどの中東の大国がそれぞれの力を誇示している。さらに過激派組織のIS『イスラム国』が台頭し、イスラエル問題とも相まって非常に複雑な状況になっているんだよ」

堀義人(ほり・よしと)1986年京大工卒、住友商事入社。米ハーバード大経営大学院で経営学修士号(MBA)取得後、92年にグロービス設立。「ヒト・カネ・チエの生態系を作り社会の創造と変革を行う」ことを目標に、経営大学院の経営、ベンチャーキャピタルの運営、経営ノウハウの出版・発信を手掛ける。茨城県出身。55歳。

堀義人(ほり・よしと)1986年京大工卒、住友商事入社。米ハーバード大経営大学院で経営学修士号(MBA)取得後、92年にグロービス設立。「ヒト・カネ・チエの生態系を作り社会の創造と変革を行う」ことを目標に、経営大学院の経営、ベンチャーキャピタルの運営、経営ノウハウの出版・発信を手掛ける。茨城県出身。55歳。

 「数年前、ダボス会議でイランの学者から面白い話を聞いた。国のパワーの源泉を分析し、国の優位性を相対的に分析していたんだ。彼の言ったパワーは4つ。(1)軍事力と軍事力を行使する意思(2)経済力(3)エネルギー力(4)文化や価値観などを源泉とするソフトパワー――だ」

 「結局、国際社会においては、どの国がどのようなパワーを有しているかを分析し、自らのパワーを増強することが重要なんだ。パワーがないと何もできず、誰も言うことを聞かない。パワーがないとその国は戦場と化し、支配され、国民は難民となることもあるんだよ。国家は強いパワーを持つことが重要だよ」

 「話を北朝鮮問題に戻そう。北朝鮮は核実験を繰り返し、ミサイルを何度も日本海に向けて発射している。核兵器をミサイルに搭載できる能力を持ち、日本やアメリカを射程に入れたら、外交のパワーバランスは大きく変わることになる。しかも、北朝鮮のトップは何をするか分からない独裁者だ」

 「北朝鮮問題を解決するパワーは日本にはない。日本には軍事力を行使する意思がないからだよ。現在、重要な当事者である韓国には大統領がいない。アメリカは北朝鮮のミサイルと核開発を断固として許さない姿勢を示している。空母のカール・ビンソンを、急きょ朝鮮半島に向かわせたんだ。アメリカはアフガニスタンで新型爆弾を使い軍事力を使う意図をさらに示し、中国や北朝鮮に圧力を強めているよ」

 「北朝鮮のミサイルが日本に到達すれば、日本は被害を受ける。子供たちも、国際情勢と国家のパワーというものを意識することが重要だよ」と言って、その夜の学びトークを終えた。

 この日の食卓は、シーンと静まり返ってしまった。日本は国民の安全を守らなければならないのだ。日本がどういうパワーを持って準備をすべきか、僕も真剣に考え続けたい。

[日経産業新聞2017年4月21日付]


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