トップ > 社説・春秋 > 記事

春秋

2017/4/20 2:30
共有
保存
印刷
その他

 東京都内で会社を経営する男性に聞いた話だ。ある画家に油彩で肖像を描いてもらった。絵が完成するまでの間に不思議なことが起きたという。画布にはまず、祖父にそっくりな人が浮かび上がった。やがて、セピア色の写真に残る様々なご先祖のおもざしにもなった。

▼むろん、画家はそれらの人々を知るよしもない。芸術家としてモデルを凝視するうちに、今の顔貌を形作っている地層のようなものを探り当てたのだろうか。できあがった肖像画は人間の背後にある時の重なりを感じさせる深みのある作品となった。見るたびに先人たちとの絆を感じさせてくれる、と男性は満足している。

▼人間だけでなく、国のかたちや振る舞いでも古い地層が顔をのぞかせることがある。英国のメイ首相が欧州連合(EU)離脱を巡り、総選挙に踏み切るという。単一市場から離れ、移民政策で独自の路線を歩むべく支持を固めるのが狙いらしい。いや応ないグローバル化に背を向け21世紀型の「栄光ある孤立」へ走るのか。

▼EUは大戦への猛省と、地域の共存、共栄の理念から生まれた。封じ込めたはずの「自国第一」という主義を古層から掘り起こすのは危うい企てに思える。報道では首相が率いる保守党が圧倒的な優位という。選挙での勝算は十分なのだろうが、国の将来への勝算は果たしてあるのか。世界各国や企業も固唾をのんでいる。

春秋をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップ

関連キーワードで検索

春秋

【PR】



日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報