新風 Silicon Valley(日経産業新聞)

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

シリコンバレーのVBと組むには目的に応じた手段を
西城洋志(ヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーCEO)

2017/4/18付
共有
保存
印刷
その他

 私は昨年、日系企業の経営幹部や新規事業担当者などと面談させていただいた。その人数は約500人に達する。そのなかで多く耳にしたのが「シリコンバレーのエコシステム(経済の生態系)を活用したい」という言葉だ。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

 シリコンバレーのエコシステムは「優秀で情熱を持った人材や大学」「起業を支えるメンター・インキュベーター」「個人投資家・ベンチャーキャピタル(VC)・コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)」「戦略的パートナーとなる企業」などで構成されている。このシステムには様々な側面があるため、事業会社の活用方法は、その目的に大きく依存する。

 当社は現状では獲得しにくい「非連続領域」での事業機会獲得を主眼にしている。通信・農業・ロボティクスというテーマを設定、その範囲において、アーリーステージのベンチャー企業への出資という手段を選んでいる。その機会を自社の事業開発に生かすため、出資先との戦略的パートナーシップを締結したり、共同プロジェクトを推進したりしている。

 補完的要素の獲得や既存事業への直接的貢献や寄与などを目的としている企業もある。その場合には自社が持つ金銭以外のリソース(経営資源)、例えば商流や顧客基盤、技術や製造能力をベンチャー企業に提供し、共に事業を行うことで相乗効果を狙う。これは比較的近い領域へ取り組む場合に特に有効である。

 シリコンバレーには、量産化で失敗する会社が多い。量産工程の設計支援や資材・部品の調達支援、品質管理の助言などは意味がある。

 自社製品や技術を無償あるいは無償に近い条件で提供し、それを使ってもらうことで成長・成功したときにリターンを期待する手法もある。ベンチャー企業のコアコンピタンス(競争力の源泉)でない部分を提供し、彼らが競争差別化要素に集中できるようにする考え方だ。

 先日、米スタンフォード大学の櫛田健児さんがあるメディアに「シリコンバレーの日本企業が陥る、10のワーストプラクティス」というテーマで寄稿していた。ワーストプラクティスは存在するものの、ベストプラクティスは残念ながら存在しないという趣旨だった。だからこそ、第一に「目的」の設定が重要であり、さらには「目的」と「手段」の一致が大事なのだ。

 非連続領域での事業機会獲得を目的としているのに、ベンチャー投資機能を持たず、戦略的パートナーシップを組もうとする。これはまさにワーストプラクティスである。戦略的パートナーシップは相互互恵が鉄則だ。相手に何を提供できるのかが不明瞭では話にならない。

 非連続領域においては、自社が提供できる資源はなかったり、あっても少なかったりする。だからこそ、まずは金銭投資という手段で関係を構築することが不可欠だ。彼らから市場や顧客、事業、技術を学び、彼らの成長と共に自社としての事業開発方針を決める。

 自社にとって比較的近い領域の事業機会の獲得を目的としているのであれば、自社と組めるステージ(成熟度)まで成長しているベンチャー企業と事業・技術提携をする。それには、自社の今の事業や技術に詳しい人間を現地に駐在させるといった方法が必要になる。

 「シリコンバレーのエコシステムの活用」は、自社の目的に合致する手段を用いて、手段の遂行に必要なリソース(人・モノ・金・権限)をあてることである。ベンチャー出資や買収がそのすべてではない。

[日経産業新聞2017年4月18日付]

「日経産業新聞」「日経MJ」をタブレットやスマートフォンで

 全紙面を画面で閲覧でき、各記事は横書きのテキストでも読めます。記事の検索や保存も可能。電子版の有料会員の方は、日経産業新聞は月額1500円、日経MJは同1000円の追加料金でお読み頂けます。


人気記事をまとめてチェック

「テクノロジー」の週刊メールマガジン無料配信中
「テクノロジー」のツイッターアカウントを開設しました。

新風 Silicon Valley(日経産業新聞)をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

【PR】

新風 Silicon Valley(日経産業新聞) 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

日本のもの作りを支える熟練工の技

職人がイノベーションの妨げになっているのかも

 先日、ある日本の地方都市に出張した。目的は繊維製品を製造・販売しているクライアント企業の工場の見学である。
 この企業が米国に進出する計画を立てており、私たちはそれを支援する予定だ。私は彼らのブランド…続き (4/28)

テスラモーターズの自動車工場(米カリフォルニア州フリーモント)

シリコンバレーのVBと組むには目的に応じた手段を

 私は昨年、日系企業の経営幹部や新規事業担当者などと面談させていただいた。その人数は約500人に達する。そのなかで多く耳にしたのが「シリコンバレーのエコシステム(経済の生態系)を活用したい」という言葉…続き (4/21)

トヨタが発表した人工知能(AI)を活用したコンセプト車(1月4日、米ラスベガス)

AIのオープンな文化がトヨタにも 研究成果を共有

 以前、トヨタ自動車の本社がある愛知県豊田市の近くに滞在したことがある。そのとき周りの人から「トヨタはとてもクローズドな会社で、翻訳をすべて社内で行っている」といった話を聞いた。私は、日本の戦国時代の…続き (4/14)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

日経産業新聞 ピックアップ2017年4月28日付

2017年4月28日付

・プログラミング技術高い学生、面接行くと支援金 ギノ、IT企業の採用後押し
・旭化成 深紫外線LEDで殺菌 窒化アルミニウム活用
・メタウォーター、カンボジアで省エネ設備 浄水場ポンプの消費電力削減
・三井化学、化学品製造に使う触媒酵素、社外向けに開発
・ALSOK、水害時の避難を支援 介護施設の計画づくりや訓練…続き

日経産業新聞 購読のお申し込み
日経産業新聞 mobile

[PR]

関連媒体サイト