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原発の安全、業界組織による「自主格付け」の課題
編集委員 久保田啓介

2017/4/13付
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 東京電力福島第1原子力発電所の事故から6年。国の原子力規制委員会が原発の安全規制を刷新したほか、電力会社なども自主規制組織を立ち上げ、今年度から原発ごとに安全性を「格付け」する試みを始める。「規制で定められた以上の安全策の強化」をめざしているが、自主規制を軌道に乗せ信頼を回復するにはなお課題が多い。

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 福島原発事故を受け、電力会社などは2012年、原子力安全推進協会(JANSI)を発足させた。モデルにしたのが米国。1979年のスリーマイル島原発事故を教訓に事業者が「原子力発電運転協会」を設け、規制当局である米原子力規制委員会と両輪になって原発の安全確保に取り組んできた。

 JANSIも元原子力安全委員長の松浦祥次郎氏が理事長に就き、事業者による「相互監視」の体制づくりを進めている。協会や会員各社でつくるチームが原発ごとに「ピアレビュー(相互評価)」を実施。新規制基準に基づく再稼働1号になった九州電力川内原発などですでに実施した。

 今年度から予定するのが原発ごとの「格付け」だ。ビアレビューに基づき安全対策を5段階でランク分けする。高評価の原発は、各社当たり年数億円とされるJANSIの会費を割り引き、保険会社と連携して財産保険の保険料に差をつけることも検討している。

 格付け結果は電力会社トップを集めて年4回開く会議で報告する。「安全対策の取り組みが一目瞭然となり、対策が遅れている原発では電力会社トップが恥をかく。日本でとりわけ強い“名誉と恥の文化”をテコに対策を強めてもらう」と松浦理事長は訴える。

 ただ格付けが実効性をあげるには時間がかかりそうだ。比較が意味をなすにはまとまった数の原発が再稼働していることが前提になる。近く再稼働が見込める関西電力高浜3、4号機などを加えても、対象の原発はまだ1桁にとどまる。

 むしろ、ここにきて浮上しているのは、大半の原発で運転停止が5年以上に及び、再稼働の道筋がなお見えない原発が多いことだ。長期停止により運転や保守に携わる職員の士気低下や技術の維持に懸念が出ている。

 トラブルや不祥事も相次いでいる。東電は柏崎刈羽原発の免震重要棟の耐震性をめぐり、規制委に事実と異なる説明をしていた。中部電力浜岡原発でも非常時に使う設備で不適切工事が発覚。関電高浜原発でも保安規定の不備からクレーンが倒れる事故が起きた。

 規制委は事態を重くみて、各社に原因究明や再発防止策づくりを求めた。ただ「東電のように社内ですら情報が伝わっていないのが実情で、電力各社がトラブル情報を出し合い、共有する仕組みができていない」と指摘する専門家は多い。

 国内には「加圧水型」と「沸騰水型」の2種類の原発があり、同じ型をもつ電力会社が協定を結び、運転員の技能向上や事故時の支援などで協力する動きはある。

 だが電力会社すべてが「ヒヤリ、ハット」といったトラブル情報を共有し、事故の芽を摘んでいく仕組みづくりはこれからだ。JANSIの松浦理事長は「トラブル情報を共有するデータベースはすでにあり、きちんと活用する体制づくりが課題になる」と話す。

 今後、再稼働する原発が増えれば点検や保守に関する情報の共有も欠かせない。事業者の自主規制が軌道に乗るには、これらの課題をひとつひとつ解決する必要がある。

[日経産業新聞2017年4月13日付]

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