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春秋

2017/4/12 2:30
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 奈良・中宮寺に飛鳥時代の彫刻の最高傑作といわれる国宝・木造菩薩(ぼさつ)半跏(はんか)像がある。レオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザにもどこか通じる穏やかなほほ笑み、右手の指を頬にあてる優美な姿は煩悩を抱えた大衆の心を慰めてきた。聖徳太子の生母がモデルといわれる。

▼その面立ちは引退を表明した浅田真央さんを思わせる。真央さんは菩薩のような人かもしれない。菩薩は悟りを目指す人、の意味だ。でもその修行は閉じた世界で完結しない。人々とともに歩み、高みに導く存在だ。いま活躍する若手スケーターは道を究めようと努力を重ねる真央さんの姿に憧れ、勇気をもらったはずだ。

▼圧巻は2014年のソチ五輪だった。ショートプログラムで16位と出遅れたが、フリーでは果敢に3回転半ジャンプに挑んだ。華麗なスピンやステップに心が震えた。メダルに届かなくても自己ベストを更新した鬼気迫る演技は、私たちの胸に大切なものを刻んだ。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の調べがよみがえる。

▼どこぞのお偉いさんが、「大事なときに必ず転ぶ」と見当違いの発言をしたときも、「縁なき衆生」などと突き放さず、笑って水に流しましたね。最愛の母を失った悲しみを乗り越え、他人には想像できぬ重圧に耐えて、人格が陶冶されたのだろう。ありがとう。お疲れさま。多くのファンが手を合わせたい気持ちだろう。

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