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春秋

2017/4/11 2:30
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 おとといの日曜日、奈良の東大寺へおもむいた。満開のサクラの花と陽気に誘われたか、大変な人出である。しかも、その8割以上は観光で訪れたらしい外国人だ。先端にスマホを固定した、いわゆる自撮り棒を手に国宝の南大門やシカの群れの前で笑顔を見せている。

▼大仏殿に入るやいなや像を見上げ「オー! マイ・ゴッド!」と大きさに驚く人がいた。建物を支える丸太の穴を通る「柱くぐり」に興じたり、灯明をささげ神妙な表情で合掌したりする姿もあった。安らかで健やかな日々への願いは万国共通だと感じる。宗派を超えた普遍の祈りが堂内に響きわたるようですがすがしい。

▼大仏は8世紀、聖武天皇の願いで建立されている。当時は疫病や豪族の反乱が続き、政治の一新のため幾度も遷都された。それでも動揺はやまず、国運をかけ大事業に挑んだのである。完成で社会不安は一掃されなかった。しかし、民心をひとつにしようとする理想が実現した姿は今の東大寺に確かにみることができよう。

▼シリアへの爆撃、北朝鮮の挑発、エジプトでのテロなど重苦しい報が相次ぐ。とはいえ、日本を代表する寺院で多国籍の笑顔に接すると希望もわく。聖武帝は造営の際「一本の草、ひとつかみの土でも」と民に援助を請い、心を集めようとした。ミサイルのような飛び道具や不条理な暴力で人心をまとめることはできまい。

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