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AIのオープンな文化がトヨタにも 研究成果を共有
フィル・キーズ(米インタートラストテクノロジーズ マネジャー)

2017/4/11付
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 以前、トヨタ自動車の本社がある愛知県豊田市の近くに滞在したことがある。そのとき周りの人から「トヨタはとてもクローズドな会社で、翻訳をすべて社内で行っている」といった話を聞いた。私は、日本の戦国時代の武将が火薬製造の秘密を守ることを誓わせるため、製造にかかわる人に自分の血で署名させていたというエピソードを思い起こした。

 そうした経験があるため、富士通の米国法人がシリコンバレーで開いたイベントでトヨタのジェームズ・カフナー氏の講演を聴いたときに驚きを禁じ得なかった。

トヨタが発表した人工知能(AI)を活用したコンセプト車(1月4日、米ラスベガス)
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トヨタが発表した人工知能(AI)を活用したコンセプト車(1月4日、米ラスベガス)

 カフナー氏はトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)の最高技術責任者(CTO)で米カーネギー・メロン大学の教授でもある。以前は米グーグルのロボット開発部門の責任者だった。トヨタは人工知能(AI)の研究開発に米国で10億ドルを投じる方針を示している。2016年12月に設立されたTRIはその中心的な役割を担うことになっている。

 カフナー氏は講演でロボットや自動運転技術に関する話題を取り上げた。そして、彼はデータの重要性を強調し、データをクラウドで保存することを勧めた。最新のデータをどこでも利用できるので、ロボットの中でしか使えないようにするときよりも、効率的に作業ができるという。

 カフナー氏は世界中で走っているトヨタ車が自動運転技術に役に立つデータを集められる可能性を指摘した。AIに機械学習させるため、トヨタが収集・蓄積した交通環境のデータを他社と共有することも検討しているという。ロボットを動かすためのオープン・ソース・ソフトウエアを支援したり、燃料電池車に関する特許をオープンにしたりしたという話もした。翻訳をすべて社内で行っているとささやかれた会社の関係者の言葉とは思えなかった。

 多くの企業が様々なデータを社内秘密として厳しく管理している。そうしたなか、トヨタが社内のデータを業界で共有しようとしていることは、トヨタの中で大きな変化が起きた表れだと思う。私はこの変化を促したのはAIの研究の特徴かもしれないと考えている。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

 企業がAIを研究開発し始めているとはいえ、その多くはまだ大学で行われている。大学は研究成果を公開する傾向が強く、AIの技術者は企業に勤めていても、研究環境をオープンにしたがる。

 例えば、グーグルと米フェイスブックはAIに関する論文を頻繁に公開している。米アップルは情報を厳しく管理することで有名であり、そうした姿勢がAIの技術者を採用するときの妨げになったと言われている。アップルが16年12月にAIの技術論文を初めて公開したことは、AIのオープンな文化の影響を受けた結果なのかもしれない。

 アップルと同じことがトヨタにも起きている可能性は十分考えられる。AIの技術は自動運転技術の基盤となる。そして自動運転技術は自動車業界の未来を左右する影響力を持っているだろう。

 カフナー氏が講演で言ったように、AIを進化させるためにデータを共有するという発想は非常に興味深い。AIの成功はデータの質と量にかかっている。もし、トヨタがカフナー氏の提案を本当に実現させることができたなら、自動車業界に大きなインパクトを与える可能性がある。

[日経産業新聞2017年4月11日付]


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