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集中力の持続「たった8秒」 スクリーン中毒の実態
瀧口 範子(フリーランス・ジャーナリスト)

2017/4/9付
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 夜遅く仕事をしていて、企業に問い合わせのメールを送ることがある。明朝の始業時間後にでも返事が来ると予想していると、驚いたことに時たま即座に返信がある。「こんな深夜に会社のメールを見ているこの人、大丈夫だろうか」。自分のことを棚に上げながらも、終日パソコンに向かっている企業人は多いと実感する。

過度なネット依存から脱却する知恵も増えた
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過度なネット依存から脱却する知恵も増えた

 あるテクノロジー・スタートアップ企業の最高経営責任者(CEO)に聞いた際、直属の部下からはメールの返信がすぐに来ることを期待している、と語っていた。どんな時間でもだ。「ワーク・ライフ・バランス」の一方で、企業人、特に経営の中枢の人々にとっては、そんなことは無関係なのだろうと思われた。

 仕事でなくても米国人はいつもインターネットに向かっている。インターネット中毒への警告は米国では15年以上も前から発せられてきたが、いっこうに解決しない。

 スマートフォン(スマホ)中毒もある。さらにソーシャル・ネットワークやゲーム、ショッピング、ストリーミング映画なども全部まとめて「スクリーン中毒」と呼ばれている。そのスクリーン中毒のせいで人々の「アテンション・スパン」もどんどん短縮している。アテンション・スパンとは、ひとつのことに集中している時間のことだ。

 15年発表のマイクロソフト調査によると、00年から十数年で平均アテンション・スパンは12秒から8秒に縮まったそうだ。金魚の9秒よりも短い。水槽の中で落ち着きなく泳ぎ回る金魚より、人間はひどいことになる。

 中毒を克服するにはどうすればいいのだろうか。いろいろな知恵が共有されている。

 まず、「自覚」を促そうというものがある。衝動的にスマホに手を伸ばす時はどんな気持ちなのか(寂しいなど)を理解し、現実世界での人とのやりとりを思い起こし、毎週一定の時間に友人たちに会い、自分の根底にある弱み(ストレスや怒りなど)に対処しようという内容だ。

 この「自覚」はちょっと高度だが、ともかく寝る際にベッドの傍にスマホやタブレットを持っていくな、というのはよくあるアドバイスだ。スクリーンの光が寝入りに障害となるばかりでなく、寝る前や起きた直後につい手に取って、そこから何時間も使い続けてしまうかもしれないからだ。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

 自己コントロールに関するものでは、1日の中でパソコンやスマホを使う時間を決める、エクササイズや食事中などは電源を切る、スクリーンをチェックするのは15分や30分おきにする、情報を逃しても気にしないようにする、などがある。

 もう少し積極的になると、ソーシャル・ネットワークのアプリを削除する、同じくスクリーン中毒の仲間と集い、食事中などにスマホをテーブルの上に置いて誰も手を出さないようにする、といった工夫もお勧めだ。

 健康的なことに時間を費やそうというアドバイスもたくさんある。エクササイズをする、散歩に行く、マラソンする、瞑想するなどだ。せめて、というタイプには、どこかに歩く間はスマホをポケットに入れたままにしようとか、電車に乗っている間はスマホばかりか本など、気を散らすものを手にしないようにしようというものがある。

 アドバイスが効かないほど重症になった場合は、セラピーやリハビリを受ける必要がある。すでにスクリーン中毒の人々のための施設がいろいろあり、もうひとつの業界ができているらしい。

 アルコールやギャンブルとはちがって、スクリーン中毒はまだ医学的に正式に定義されていない。だが、ネットやスマホを前に落ち着きをなくしたわれわれの様子は、放っておくとけっこう悪化しそうである。

[日経MJ2017年4月9日付]


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