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春秋

2017/4/6 2:30
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 「四つ辻へ行って、みんなにお辞儀をして、地面へ接吻(せっぷん)なさい。だって、あなたは大地に対しても罪を犯しなすったんですもの」。ドストエフスキー「罪と罰」の終幕で、殺人者の主人公は、ある女性にそう諭される(米川正夫訳)。彼は言葉に従った後、自首をする。

▼舞台は現在のサンクトペテルブルク。大地に接吻したのがセンナヤ広場だ。地方からの流入者が急増する大都会で、安アパートや酒場などが集まる一画だったという。貧しさゆえ大学を辞め金貸しを殺す主人公も地方からの上京組でこのかいわいの住民だ。選ばれた人間には殺人が許されるという考えにとりつかれていた。

▼今では文学ファンの観光客も多いこの街がテロの現場になった。センナヤ広場駅を出た地下鉄で爆発が起き、多数の命を奪ったのだ。報道によれば当局が自爆テロの実行犯とみているのは20代前半の男だという。中央アジア出身で6年前にロシア国籍を取得し、父親の自動車修理業を手伝うなど普通の青年だったとされる。

▼犯行の背景はまだわからない。過激思想にふれ、大義のためなら殺人も許されるという考えに染まったのか。解明しようにも本人はもういない。罰することができないうえ、ほぼ同い年である「罪と罰」の主人公のように改心する機会もない。自爆テロの無残さを改めて思う。裏に犯行を命じた人間がいるなら、許せない。

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