トップ > 社説・春秋 > 記事

春秋

2017/4/5 2:30
共有
保存
印刷
その他

 真剣を用いる居合の稽古は、当然のことながらこの上なく真剣なものである。段を持つ知人に特に留意すべき点を尋ねると、意外なことに「刀を鞘(さや)に収める際、心に揺らぎがあれば自らの左手を切り込んでしまう」との答え。苦笑しながら、証拠の古傷を見せてくれた。

▼抜くときより、収めるほうが難しい。これは議論や駆け引きなどの場合でも、同じなのかもしれない。政府が一時帰国させていた駐韓大使らの帰任を決めた。ことの発端は慰安婦問題を象徴する少女像の設置である。大使引きあげがその対抗措置であったのなら、進展がないのになぜ韓国に戻すのかという疑問が当然わく。

▼だがなにしろかの国では、大統領が容疑者となり、世論は紛糾し、社会全体が揺れに揺れている。ニュース映像などを目にすれば、よそ事ながら行く末が心配になってしまう。さらに5月の大統領選挙に向けては、対日強硬姿勢が目立つ候補者がリードし、加えて北朝鮮が核やミサイルがらみの蛮行を繰り返しているのだ。

▼日本が大使の帰国という刀を振りかざしていることさえ、もはやだれも気にとめていないのかもしれない。居合の名人上手が目指すところは、刀を抜くことなく相手を制し、さらに和合へと導く道だと聞く。現実の国際政治の世界では望むべくもない境地であるが、あるじの戻った駐韓大使館にはただ奮闘を願うしかない。

春秋をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップ

関連キーワードで検索

春秋

【PR】



日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報