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シリコンバレー流会議 議論に水さす人の重要な役割
野口 功一(PwCコンサルティング パートナー)

2017/4/4付
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 シリコンバレーで行われたワークショップに参加したときのことだ。1チーム6人くらいで自由に議論をするのだが、その中に1人だけ「なぜ?」「本当にそうなのか?」という形で問いかけをする役割の人がいた。議論の否定はしない。ただ問いかけをするのである。

のぐち・こういち 主にイノベーションを起こすための社内組織・風土の改革のコンサルティングを行っている。スタートアップ企業や地方創生の支援にも取り組んでいる。海外の事例にも詳しい。

のぐち・こういち 主にイノベーションを起こすための社内組織・風土の改革のコンサルティングを行っている。スタートアップ企業や地方創生の支援にも取り組んでいる。海外の事例にも詳しい。

 最初は「せっかくここまで議論したのに水をさすようなことをするなあ」と感じていた。だが、それが繰り返されるうちに、それまでの議論を新たな側面から見られるようになり、今まで気づかなかった結論を導き出せるようになった。当初の議論とは180度違うような結論をメンバー全員が納得ずくで出せるといったことも起き、結論を導くスピードも速くなった。

 日本における多くの会議はどうであろう。伝統的に「調整してまとめあげて結論としよう」という傾向が強くあるような気がする。日本人は無難な結論を調整型でまとめあげることについては非常に上手である。半面、なかなか殻を破るような話はしにくい。

 私が参加したワークショップでは、予定調和的に進んでいた議論に問いかけが投げかけられた。それにより新たな視点が生まれている。

 これは議論やワークショップに限らない。組織をつくるとき、技能や得意分野、経歴などが似通った人材を集めるのがよいと考えられている。組織に求められる役割が専門的になり、しかも細分化されているからだ。

 しかし、今は新しい技術が生まれ、業界や国境の壁が消えつつある。不確実性も高まり、何が正解なのかが見えにくくなっている。組織にまったく異なった経歴を持つ人を少しでも入れると、よい意味で調和が破壊され、ブレイクスルーが始まる。これこそが多様性(ダイバーシティー)を必要とする理由の1つである。

 調和の破壊は組織の運営手法にも関係する。これまでのリーダーの役割の1つは組織内の調和をはかることだった。これからのリーダーにとって、いかに予定調和を壊す問いかけや仕掛けができるかが重要になる。

 私のチームでは、プロジェクトが進んで形が見えてきたときに、私がわざと全体の方向性にかかわるような問いかけをすることがある。メンバーにとってはたまらないし、場合によっては恨まれているかもしれない。ただ、そうすることにより、メンバーが持っている能力が最大限に発揮される場合も多い。窮地に追いつめられると潜んでいた力が表に出てくるのである。ちょっとした不安定要素を入れることで今までとはちがった結論が導きだされる。

 あるスポーツチームの監督と話をしたことがある。彼が言うには、チームの潜在能力を手っ取り早く上げたいと思うなら、わざと混乱をつくるのがよいとのことだ。「選手たちが今の状況をいかに変えていくかを真剣に考えるようになり、実行する。調和の中での達成感よりも高い達成感が得られ、士気も上がり、次の取り組みに向かっていく」。こうした非常に有益な流れ(ループ)が生まれるそうだ。

 これからの我々の仕事のあり方も、このスポーツチームと同じであると考えている。日本は失敗を許す文化がなかなか根付かない。調和を破壊するという考えも受け入れるのは難しいかもしれないし、本当に破壊してしまうこともあるかもしれない。しかし、それによって得られるものは計り知れない。革新的な結論を導き出すために、リーダーを中心に勇気を持って「混乱」を起こしてみてはいかがだろうか。

[日経産業新聞2017年4月4日付]


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