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世界経済の改善に安住するな

2017/4/3 2:30
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 世界経済が緩やかに改善してきた。金融危機以降続いてきた先進国のデフレ懸念は和らぎ、新興国経済も安定感を増している。

 だが、本格的な回復にはまだ力不足だ。企業の投資姿勢はなお慎重で、生産性の伸びは低い。米国の利上げが進めば、新興国経済が動揺する恐れもある。

 先進国、新興国ともに経済の好転に安住することなく、潜在成長力を高めるための構造改革を強化すべきだ。同時に、成長の芽を摘みかねない保護主義の台頭も防止しなければならない。

強固でない成長基盤

 経済協力開発機構(OECD)が先月まとめた経済予測によると、世界の経済成長率は今年3.3%と昨年を0.3ポイント上回り、2018年も3.6%と伸びを続ける。

 米国の成長が上向くことが大きいが、日欧経済にも明るさが見えてきた。ブラジルやロシアなどの資源国も商品市況の回復に支えられ、苦境を脱しつつある。

 先進国と新興国の経済がともに安定してきたことで、昨年初めの人民元ショックをきっかけにした世界経済への悲観論は後退した。もう少し長く見れば、08年の金融危機以降の長い調整期間がようやく終わりを迎えつつあるともいえよう。

 とはいっても安心は禁物だ。様々な弱さやリスクを抱えながらの改善だからだ。

 一つは成長の基盤がまだ強固でないことだ。

 先進国では企業収益の改善にもかかわらず設備投資の勢いは弱い。増えているのは価格上昇を追い風としたエネルギー関連投資ぐらいで、それ以上の広がりには欠ける。雇用は拡大しているものの労働生産性の伸びが戻らないのは気がかりだ。新興国経済の安定も資源価格高頼みという面がある。

 2つ目は過剰債務の足かせだ。中国は国有企業を中心にした過剰債務の調整が遅れている。住宅バブルで急増した不動産向け融資の抑制にも動くが、経済の急降下を防ぎつつ、うまく債務減らしが進められるかは不透明だ。ほかの新興国でも外貨建ての債務が膨らんでいる企業が多い。

 米連邦準備理事会(FRB)は利上げペースをこれまでより早める構えで、米金利の上昇やドル高が進めば、過剰債務を抱えた新興国の経済や通貨に打撃を与える恐れがある。

 もう一つは保護主義が広がるリスクだ。低迷していた世界貿易は回復の兆しもみえるが、トランプ米政権が高関税など貿易制限的な措置を取るようなことがあれば、一気に縮小しかねない。貿易戦争への懸念からグローバル企業が投資を先送りする恐れもある。

 安定し始めた世界経済に弾みをつけ、持続性を高めるにはどうすべきか。

 先進国は米国を中心に需給ギャップをほぼ解消しつつあり、政策の中心は景気刺激型から潜在成長力を高める構造強化型に軸足を移すべきだ。

 日米欧の金融政策のスタンスには差が出てきているが、金融緩和のさらなる拡大で経済を支えなければいけない局面は終わりつつある。財政政策を発動するなら中長期的な生産性上昇につながるものに集中すべきだ。米国の老朽化したインフラ補修・新設や税制改革などが一例だ。

活力高める改革急げ

 より重要なのは、規制や法制の改革によって経済の活力を高める環境整備だ。ビッグデータの活用をしやすくするなど、技術革新に伴う新たな需要を後押ししたり、成長分野に働き手が移動しやすくしたりすることなどが求められる。技術変化やグローバル化の波に取り残された人々の技能習得を支援し、賃金の高い職を見つけやすくすることも大事だ。

 保護主義の流れに歯止めをかけることも喫緊の課題だ。

 トランプ米政権は先週、中国や日本など対米黒字国が不公正な貿易関連措置を取っていないかを徹底的に調査するよう商務省などに求める大統領令を出した。問題がみつかれば何らかの対応措置を取る方針という。

 2国間の貿易不均衡を一方的な措置で是正しようとするのは誤りだ。自由貿易を脅かし、制裁合戦を招く恐れもある。世界はこうした米国の姿勢を批判するとともに、広域の自由貿易協定(FTA)を促進することで保護主義に対抗していくべきだ。

 日本の役割も重要である。自由貿易擁護の先頭に立つとともに、構造改革や社会保障改革を通じて自らの経済や財政の基盤を強くすることが欠かせない。

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