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ITで気候変動対策は「約束された市場」
三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷尚

2017/3/30付
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 今、最も勢いを感じさせるビジネスはIT(情報技術)の活用だろう。デジタリゼーション(モノやサービスのデジタル化)、ビッグデータ、人工知能(AI)、ドイツが官民で進めるインダストリー4.0(第4次産業革命)、日本が進めるスマート社会構想の超スマート社会(ソサエティー5.0)など。これらは大量のデータとネットを活用し、生産やサービスの向上を目指すことが共通している。

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 ソリューション(解決支援)の提供には、人やモノの動きだけでなく、自然環境情報を含めたデータの蓄積と解析、またデータの国際標準化など基礎インフラの整備が欠かせない。

 インダストリー4.0を提唱するドイツと共に国際標準化の協力を目指す日独の枠組みである「ハノーバー宣言」。あるいは気象や地形などの衛星観測から得た自然環境情報を中心に、情報の一元的提供を目指す「DIAS計画」など、日本の政府も動いている。

 実際の商用化はこれからだが、最も早くビジネスになりそうなのが二酸化炭素(CO2)削減など気候変動対策のようだ。

 デジタル情報を活用した生産現場での最適化は普通に行われている。今後、期待されるのは需要を正確に予測することで、無駄な生産を減らすサプライチェーン(供給網)全体の最適化だ。

 「生産しないことによる効率化」はCO2削減の切り札かもしれない。太陽光や風力などの再生可能エネルギーは発電量が不安定なため大型蓄電池活用が期待されるが、電気の出し入れで20%以上も失われるという。

 変動する発電量を正確に予測できれば、工場や家庭など需要側での調整や、火力発電の細かな発電量の制御が容易になる。蓄電池の負担を軽減し、再生エネ利用のボトルネックを緩和できる。

 ダムは洪水防止、灌漑(かんがい)、発電など複数の機能を持ち、発電量だけを考えた運用はできない。貯水量と電力需要の見通しが正確にできれば、水量調整と発電を最適化し、収益を増やすこともできるだろう。

 ゲリラ豪雨による都市型洪水や大型台風による高潮などに備えた都市設計。降雪に伴う高速道路規制を予測した物流リスクの軽減など、気候変動災害にも活用できる。

 気候変動対策は間違いなく需要がある、「約束された市場」だ。

 まだ気付かれていない市場の開拓には、成功事例が一番だ。関心を高め、次の需要を掘り起こし、好循環を生みだす。

 これは大きな「ゲームチェンジ」の始まりかもしれない。情報技術は瞬時に正確な需要の把握を可能にする。需要と供給の距離が縮めば「需要優位」が強まり、差異化が難しい製品では、コモディティー(汎用品)化が加速しそうだ。

 また、鉄や船舶、自動車や半導体、電子機器など装置産業と異なり、ソフトによるソリューション提供は巨額の投資が不要であり、投資の規模縮小が進む。日本の産業競争力再生のカギは、モノ作りからコト作りと言われるが、それ以上に産業構造が変わりそうだ。

 データの収集と蓄積、解析システムは地味だが、競争力を支える大事なインフラだ。政府中心にインフラを整え、民間がソリューションを開発する、官民の役割分担が必要だ。情報技術を活用したCO2対策は新しい産業モデルの試金石になるかもしれない。

[日経産業新聞2017年3月30日付]

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