面白く生きる! (日経産業新聞)

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

偉人に学ぶ大震災対応 正確な情報、世界に発信
グロービス経営大学院学長 堀義人氏(57)

2017/3/10付
共有
保存
印刷
その他

 あす11日で東日本大震災から6年となる。毎年この時期になると、震災直後にめまぐるしく過ぎていった日々を思い出す。

 震災の3日後の月曜日にグロービス東京校で「大災害のなかで僕らにできること」と題したセミナーを開いた。もともと予定していたセミナーのテーマを急きょ変えて開催することにした。その日は東京電力福島第1原子力発電所の建屋が水素爆発した。余震が続き、首都圏では電力不足に対応するため計画停電が行われていた。それでも参加者は100人を超えた。

 セミナー終了後に、登壇者や主催者である僕らが被災地で何ができるかを話し合った。そこで決めたのが震災復興支援プロジェクトの立ち上げだ。人と人、日本と世界を希望でつなぐとの意味を込め、希望と虹(RAINBOW)を組み合わせた「KIBOW」という名前を付けた。

 過去の事例に学ぼうと、関東大震災で偉人たちがどうふるまったのかを調べた。一番参考になったのが渋沢栄一氏だ。邸宅を避難所にして物資を人々に与えただけでなく、世界に電報を送っていたことに感銘を受けた。海外の友人に自分が無事であることを伝え、義援金をお願いするとともに、日本の状況を正確に伝えた。

 僕も渋沢栄一氏と同じことをしようと思い立った。当時、僕らが懸念していたのが世界の報道機関の姿勢だ。米CNNテレビなどが福島第1原発の事故をセンセーショナルに報道していた。あたかも日本全体が放射性物質で覆われていると言わんばかりの伝え方だった。

 今の時代のツールは電報ではなくて、メールだ。米ハーバード経営大学院の同窓生やダボス会議などで出会った世界の人々約3000人に向けて、起業家の視点で発信することにした。題名は「Email From Japan」だ。

 福島第1原発の状況から始まり、放射線の度合い、日本の人々の冷静な振る舞いなどを事実に基づいて伝えた。東京は安全だから多くの人や企業に早く日本に来てほしいということを主に訴えた。

 2011年8月まで全部で13通を発信し、返信にも一つ一つ返事をして対話をした。メールを発信している合間の4月には、英国エコノミスト誌とKIBOWで共同シンポジウムも開いた。

堀義人(ほり・よしと)1986年京大工卒、住友商事入社。米ハーバード大経営大学院で経営学修士号(MBA)取得後、92年にグロービス設立。「ヒト・カネ・チエの生態系を作り社会の創造と変革を行う」ことを目標に、経営大学院の経営、ベンチャーキャピタルの運営、経営ノウハウの出版・発信を手掛ける。茨城県出身。54歳。

堀義人(ほり・よしと)1986年京大工卒、住友商事入社。米ハーバード大経営大学院で経営学修士号(MBA)取得後、92年にグロービス設立。「ヒト・カネ・チエの生態系を作り社会の創造と変革を行う」ことを目標に、経営大学院の経営、ベンチャーキャピタルの運営、経営ノウハウの出版・発信を手掛ける。茨城県出身。54歳。

 11年5月にはダボス会議を主催する世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ会長が急きょ来日した。世界から日本への支援・支持を表明するために「ジャパンミーティング」を開催してくれたのだ。それまでダボス会議で何度会っても、シュワブ氏は僕の名前と顔を覚えてくれなかった。だが、シュワブ氏は「君のメールは大変参考になった」と日本に来るとすぐに僕に声をかけてくれた。必死に送ったメールが認識され、シュワブ氏を通じて微力ながらも日本に貢献できた気がする。

 翌年、ダボス会議の夜にグロービスが開いた催しに、ある年配の紳士が夫人を伴ってやってきた。「メールを送ってくれた君に会いに来た」という。その人が、インドネシアのリッポー・グループの最高経営責任者(CEO)、ジェームズ・リアディさんだった。それ以来、友人として親交を深めている。

 Email From Japanを書いていた震災後の時期は本当に忙しかった。KIBOWで支援金集めに奔走し、被災地訪問を2週間後から始めた。津波に襲われた福島・宮城・岩手県の沿岸部のほぼすべての市町村を7月までに訪問した。

 多忙だったけど、時間を割いて海外に発信して本当に良かったと思う。渋沢栄一氏という偉人から学んだ大震災への対応が、復興に少しでも役に立てたとすれば幸いだ。メールは被災地や日本を世界につないだだけでなく、僕を世界につなげてくれた。

[日経産業新聞2017年3月10日付]

「日経産業新聞」「日経MJ」をタブレットやスマートフォンで

 全紙面を画面で閲覧でき、各記事は横書きのテキストでも読めます。記事の検索や保存も可能。電子版の有料会員の方は、日経産業新聞は月額1500円、日経MJは同1000円の追加料金でお読み頂けます。

面白く生きる! (日経産業新聞)をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

【PR】

面白く生きる! (日経産業新聞) 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

北朝鮮の軍事パレードに登場したICBM「KN08」かその改良型とみられる弾道ミサイル(15日、平壌)=共同

共同

北朝鮮問題で国家の「パワー」と国際情勢学ぶ

 「今日の学びトークは~」。子供たちが囲む食卓で、期待感を高めるべく語尾を上げて間をおく。「北朝鮮問題です」と宣言すると、子供たちが「オー」と反応し、僕が語り始める。その夜も食卓でテーマを決めて話をす…続き (4/26)

入社式で社歌を歌うトヨタ自動車の新入社員(3日、愛知県豊田市)

人材呼ぶ職場作りへ、「トップが楽しむこと」大事

 新入社員が新たな空気を職場にもたらす季節となった。企業成長の大きなカギとなるのが人材だ。「どうすれば優秀な人材を獲得できるか」。創業以来ずっと考えてきたのがこの問いだ。優秀な人材を獲得できたら成長し…続き (4/19)

外国人に対する苦手意識を克服するには日常的な交流が大切(異文化交流を目的につくられた寮で談笑する外国人学生たち)

異文化楽しみ、信頼関係構築する力を会得

 「文化に良しあしはない。単に違いがあるだけだ」
 僕が高校時代にオーストラリアへ留学したときに、ロータリークラブで奨学生を担当する地元の名士からかけられた言葉だ。それ以来、米国の大学院に留学したときも…続き (4/12)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

日経産業新聞 ピックアップ2017年5月1日付

2017年5月1日付

・脳信号でコンピューター操作 BMI、米で開発熱
・国際航業、太陽光発電を3Dモデルで異常検知 ドローンの画像解析
・鉄鋼大手3社 鉄冷え一方もなお残るリスク
・三菱倉庫、医薬物流で大阪に新拠点 高度な温度管理で収益力
・パフやA&S、「交換留職」ネットワーク…続き

日経産業新聞 購読のお申し込み
日経産業新聞 mobile

[PR]

関連媒体サイト